2018 Fiscal Year Research-status Report
BRCA1/2生殖細胞系列の病的変異保因者における発癌機序の解明
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18K16292
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Research Institution | 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院(がんセンター局総合ゲノム診療統括部ゲノム解析センタ |
Principal Investigator |
弘津 陽介 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院(がんセンター局総合ゲノム診療統括部ゲノム解析センタ, ゲノム解析センター, 研究員 (10793838)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BRCA1/2 |
Outline of Annual Research Achievements |
BRCA1またはBRCA2遺伝子(BRCA1/2)は、DNA損傷に応答して相同組み換え修復に関わる癌抑制遺伝子であり、遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子としても知られている。本研究では、BRCA1/2遺伝子の生殖細胞系列に病的変異をもつ保因者の臨床検体を用いて、癌組織中で起こるBRCA1/2遺伝子のゲノム異常を解析し、早期から晩期にかけて起こる連続的なゲノム異常を明らかにすることを目的とする。 これまでに、BRCA1/2遺伝子の生殖細胞系列変異を有する保因者の癌組織からDNAを抽出し、一部の検体については次世代シークエンス解析を終えている。BRCA1/2のAllelic Imbalanceが起きていることを見出した。頻度は低いが、BRCA遺伝子の対立遺伝子に変異が起きている症例もいた。一方、稀な多型であり、機能意義が不明なバリアント(Variants of Uncertain Significance, VUS)を有する患者の癌組織では、BRCA遺伝子座のAllelic Imbalanceは生じていなかった。 臨床的にはBRCA遺伝子の欠失が起きている場合、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤に対して感受性を示すことが知られている。本研究において見出した癌組織のBRCA1/2のAllelic Imbalanceが起きている症例において、PARP阻害剤の治療反応性について関連性を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の癌組織に関して当初の予定通り、次世代シークエンス解析を終え、BRCA遺伝子座に起こるゲノム異常の一端を明らかにした。同様の手法により、症例数を増やしていき、BRCA1/2変異駆動型の発癌機構のモデル提唱に繋げていきたい。抽出したDNAサンプルを用いて、DNAメチル化解析を今後進めて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
BRCA1遺伝子は、メチル化によるエピジェネティックサイレンシングが癌組織で起きることが知られている。BRCA1/2生殖細胞系列変異保因者の癌部において、同様な現象が起こり得るか実験で証明する。また、次世代シークエンス解析で得られた情報から、腫瘍率やコピー数を考慮して機械学習による癌細胞割合を推定したいと考えている。一部の患者については、PARP阻害剤の治療を受けており、本研究結果と併せて関連性があるか調べる予定である。
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