2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16299
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
塚越 真梨子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60781317)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 肝細胞癌 / 肝星細胞 / Conophylline |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、癌の微小環境における癌細胞と周囲間質との相互作用の重要性が報告されている。本研究では癌間質の主な構成要素である癌関連線維芽細胞(CAF)に注目し、肝癌におけるCAFの役割を明らかにすることを目的とした。また、肝星細胞の活性化および線維化を抑制するConophyllineがCAFを制御する可能性を検討し、肝癌に対する新たな治療戦略を開発することを目的とした。 これまでの研究の結果、肝癌検体から増殖の安定したCAFの樹立に成功し、in vitroにおいて機能解析を行った。その結果、肝癌CAFは肝癌細胞株の浸潤・増殖を促進させることを明らかにした。肝癌CAF培養細胞にConophyllineを投与することでCAFの活性化が抑制され、CAFによる増殖・浸潤促進効果をConophyllineが抑制することを明らかにした。さらにCAF培養細胞にConophyllineを投与した際の液性因子の変化を比較検討したところ、Conophyllineにより液性因子の産生が抑制されることが明らかになった。これらの結果から、Conophyllineによる線維化抑制作用により、肝細胞癌CAFの活性が抑制され、肝癌の発現あるいは進展が抑制できる可能性が示された。肝癌においてCAFを治療標的とすることで、発癌の抑制や既存制癌剤の併用による治療効果の増強など、革新的な治療に結びつく可能性があり、今後マウス皮下腫瘍モデルを用いてさらなる解析をすすめていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①in vitroにおけるCAFの機能解析:はじめにヒト肝癌切除標本よりCAFを樹立し、樹立細胞のαSMAを確認。安定した増殖を示すCAFの樹立に成功した。次にCAFの肝癌細胞株に対する影響を検討し、CAFが肝癌細胞株の増殖・浸潤を促進することを明らかにした。 ②ConophyllineによるCAFの抑制効果の検討:CAF培養細胞にConophyllineを濃度を変えて投与し、星細胞活性化の指標であるαSMAの発現をwestern blot法で確認。ConophyllineがCAFの活性化を抑制することを明らかにした。また肝癌細胞株において、CAFによる増殖・浸潤促進効果をConophyllineが抑制することを明らかにした。 ③CAF培養上清の機能解析およびConophylline投与による変化を検証:CAF培養細胞にConophyllineを投与した際のサイトカインの変化を比較検討し、Conophyllineがサイトカイン産生を抑制することをサイトカインアレイおよびELISAを用いて示した。 ④CAF培養上清による肝癌細胞の薬剤耐性機序の検討:CAF培養上清中のサイトカイン等による肝癌細胞のsorafenib耐性を評価し、Conophylline投与により薬剤耐性効果が抑制されることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vitroでの研究結果に基づき、in vivoにおけるCAFの役割およびConophyllineの作用について検証を行う。すでに肝癌細胞株とCAFを混合し、NOD-SCIDマウスの背部に接種することで、皮下腫瘍モデルを作成しており、このマウスモデルで研究をすすめる。さらにConophyllineの作用機序を解明する。 ① in vivoにおけるCAFの評価およびConophyllineの作用の検証:肝癌細胞単独群とCAF混合群とで腫瘍の増大に差があるか検証する。さらに両群にConophyllineを投与することで腫瘍増殖に変化が生じるか検証する。 ② in vivoにおける肝癌細胞の薬剤耐性機序の検討:マウス皮下腫瘍モデルにおいてsorafenib耐性を評価し、Conophylline投与が薬剤耐性に与える影響を検証する。 ③ Conophylline作用機序の解明:In vitroでの検証において、Conophyllineがサイトカイン産生の抑制に関わることが明らかとなった。抑制されたサイトカインの発現制御に関わる因子を同定することで、Conophyllineの作用機序を明らかにする。
|