2018 Fiscal Year Research-status Report
胃がん腫瘍組織内免疫関連因子を用いた術前化学療法効果予測と効果増強への応用
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18K16308
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浦川 真哉 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40768975)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胃癌 / 術前化学療法 / Tim3 / オフターゲット効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
術前化学療法を施行した胃癌症例の腫瘍組織および血液の回収、浸潤免疫細胞の抽出、フローサイトメトリー解析を行っている。現在、化学療法後の腫瘍組織浸潤免疫細胞(手術摘出標本より抽出)が解析可能な症例数が17例である。うち2例は、内視鏡での検体も採取しており、経時的な解析すなわち浸潤免疫細胞の変化を解析することが可能である。結果、組織学的効果判定に応じてTim3発現量が異なることや、Tim3単独発現細胞が出現する症例は、組織学的効果判定がgrade 1a,1b(grade 2以上には存在しない)であった。すなわち、これは腫瘍細胞の存在が、Tim3単独発現細胞の発生メカニズムの一つの要因であることを示唆する。また経時的な免疫細胞解析では、抑制性免疫細胞の一つである骨髄由来性抑制免疫細胞(MDSC)の表面マーカーに変化を認めた。これは、同じ細胞群として扱われている免疫細胞にも、化学療法において微細な変化が起こっていることを意味する。 解析症例数が少ないことから、Tim3単独発現細胞の出現と臨床病理学的因子との関連性を見出すことは困難な状況ではあるが、こちらに関しては症例数を増やすことで可能になるのではないかと考える。また解析症例の今後経過を追うことで、予後に関しても検討していく予定としている。 17例の解析症例のうち2例で、腫瘍組織浸潤免疫細胞にTim3単独発現細胞の出現を認めており、こちらの症例に関しては機能解析としてサイトカイン解析を行っている。やはり、Tim3単独発現細胞はグランザイムB・パーフォリン分泌量が高く、意味のある細胞であることが分かる。抽出した免疫細胞数が少ないことから、FACS AriaⅡでのTim3単独発現細胞を精製し、標的細胞(CD3高発現株)と共培養する系での細胞傷害活性評価は行えていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、胃癌において術前化学療法(NAC)を行う症例数を約30例と予想した。しかし、全国的に胃癌手術症例が少なくなっていること、また当院においては比較的早期の胃癌症例の割合が多くなっていることから、NAC症例が減少している。そのため、解析症例が17例と、予定より遅れている。Tim3単独発現細胞の機能解析においても、17例中2例にしか認めないことから、サイトカイン解析は行っているものの、細胞傷害活性(標的細胞であるCD3高発現細胞と共培養する系)の評価は行えていない。 以上より「やや遅れている」という評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
「進捗状況がやや遅れている」理由でも述べたが、術前化学療法(NAC)の適応となる胃癌症例が減少傾向にある。今後の推進方策は、主に症例数の増加に尽きる。適応症例に関しては、検体採取・免疫細胞抽出・フローサイトメトリー解析の精度を上げていくことで、漏らさないことが必要である。その中で、Tim3単独発現細胞が存在する症例においては、細胞傷害活性を中心に機能解析を行っていく。発生メカニズム解析は、NACを行っていない腫瘍組織検体を用いても行うことが可能である。よって、Tim3単独発現細胞の出現に関わる因子の見当がつき次第、検討していく予定としている。 しかし、NAC適応の胃癌症例が目標症例数に到達しない可能性があり、その際の研究計画変更を考える必要がある。 当教室は、胃癌以外にも多数のがん種において横断的に研究を行っているという特徴がある。その中でも、食道癌は術前化学療法が標準治療となっており、当院での手術症例数は多い。もし胃癌において検体採取が困難な場合は、食道癌においての解析を加えることで、胃癌との比較を行うとともに、胃癌と同様にTim3単独発現細胞が発生するのであれば、続けて機能解析および発生メカニズム解析を行っていく。この研究計画変更は、食道癌というがん種が異なるものを解析するという点だけでなく、当院では食道癌の術前化学療法メニューがドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル(DCF療法)であり、胃癌のTS-1+シスプラチン(SP療法)もしくはドセタキセル+オキサリプラチン+TS-1(DOS療法)とは異なるという点に、注意し遂行していく必要がある。
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