2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌臨床サンプルからの再発細胞(スーパー癌幹細胞)の同定
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18K16309
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 祥悠 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20781735)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 臨床検体 / 初代培養 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌による死亡率は本邦トップ3に位置し、再発癌の治療は依然として困難である。転移・再発の原因としてLrg5やDclk1などの癌幹細胞の概念が注目されているが、大腸癌の多様性から考えれば、癌幹細胞の種類も複数存在し、症例ごとに個別の癌幹細胞が存在してもおかしくないと考え、本研究では患者さんの臨床検体から個々の症例で重要な働きをする癌幹細胞を同定することを目的とした。
2018年には、10症例の大腸癌患者の手術切除組織よりヌードマウスの皮下にPDXを作成し、そのうち9例にマトリゲル上での細胞培養することに成功した。2年間で20例を予定しており、その約半数が1年間で達成できたので予定通りである。本研究の鍵は患者由来細胞の培養の成功率であったが、マウスを使うことで9割がin vitro培養にもっていけたことは大きな成果である。さらにスフェロイドを形成した腫瘍細胞を1個~3個の単位でマウスに皮下移植し、腫瘍を形成させ、3例においてRNA sequenceを行った。また sphereをマウス皮下に移植して作成した腫瘍を細胞単位に分解して1例でsingle cell解析を行った。別の3例においては、二次元培養したすべての細胞に色素マーキングを施してからスフェロイドを作成すると、ほとんどの細胞は細胞分裂を繰り消した結果、色素を失うが、癌幹細胞はほとんど分裂をしないために色素が維持される。色素が維持された幹細胞性の高い細胞とマーキングが消えた分裂回数の多い分化した細胞のRNA sequenceを実行した。 これまでに得られた結果からは、幹細胞性の高い集団や細胞を同定できていることが示されたため、個々の症例で働く個別の癌幹細胞の同定が達成される見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、① PDX(patient derived xenograft)の作成を10症例に行い、できたPDXを腫瘍細胞をバラバラに分離して、マトリゲル上で培養することに9例で成功した。② 3例において 1-3個の少数のsphereをヌードマウス皮下に移植し、腫瘍を形成させ、bulkサンプルからRNA sequenceを行った。原発巣の遺伝子発現と比較すると、形成した腫瘍では一部の既知の幹細胞マーカー以外に複数の幹細胞マーカー候補遺伝子の発現が亢進していることが分かり、幹細胞性の高い腫瘍が形成されたことが示唆された。③ 色素で細胞マーキングを行った後にsingle cellからsphereを形成させることで、sphereの中で分裂回数の少ない幹細胞性の高い細胞のみをマーキングすることに成功した。そのうち3例において、マーキングされた幹細胞性の高い細胞とマーキングが消えた分裂回数の多い分化した細胞のRNA sequenceを行った。この系でもマーキングされた細胞において既知の幹細胞マーカーの発現と共に複数の幹細胞マーカー候補遺伝子の発現が亢進していた。④ sphereをマウス皮下に移植して作成した腫瘍を細胞単位に解体し、single cell解析を行った。この結果から、遺伝子系譜図を作成し、幹細胞性の高い細胞集団とそれを構成する遺伝子群が明らかとなる。本研究の目的は、手術によって切除された大腸癌組織の中から、1個~数個の細胞でマウスに腫瘍を形成する能力を有するスーパー癌幹細胞を同定し、その性質を解明することである。これまでに得られた結果から、症例ごとに異なる幹細胞性の高い集団や細胞を同定できていることが示されつつある。本研究では、上記の複数のアプローチを計画したが、そのいずれもが成功し、予想以上に順調に成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
癌幹細胞の性質は患者ごとに多様であると考えられるため、さらに10例程度症例を追加する予定である。並行して、既に培養している細胞を用いて、sphere単位での皮下移植による腫瘍形成、スーパー癌幹細胞のマーキング・その発現解析、幹細胞性の高い細胞からなる腫瘍のシングルセル解析を行う。また、スーパー癌幹細胞のマーキングにおいては、マーキングされた細胞が実際に幹細胞性の高い細胞であることを、造腫瘍性などを評価することによって証明する。最終的には得られた発現様式を様々な手法で解析することにより(例えばIPA解析やGO解析を補助として)、患者ごとに異なる未知の癌幹細胞マーカーの同定を行う。解析の結果、多くの症例で共通する未知の癌幹細胞マーカーの同定にも繋がる可能性も考えられる。
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