2018 Fiscal Year Research-status Report
糖代謝・転写因子KLF4/FOXM1を標的とした膵癌の新規治療法の基盤的研究
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18K16323
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
及能 拓朗 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20722458)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵癌 / FOXM1 / KLF4 / タイト結合 / claudin-1 / EMT / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究経過としては、ヒト膵癌cell lineおよび正常ヒト膵管上皮細胞を用いて、以下のテーマを研究している。①膵癌細胞株におけるグルコース代謝とタイト結合変化、EMT との関連の解析、②膵癌細胞株におけるFOXM1 のタイト結合とEMT 制御に関する機能解析、③正常ヒト膵管上皮細胞モデルを用いたFOXM1 の機能解析、④ヒト膵癌組織におけるFOXM1 関連因子の発現解析。 研究の成果については、正常膵組織ではほぼ発現のないFOXM1はヒト膵癌細胞株(HPAC, PANC-1)において高発現しており、直接または代謝因子Snail等を介して、タイト結合タンパクであるclaudin-1のdownregulationを行うことでEMTを促進し、膵癌の悪性化に関与していると考えられた。 一方、低グルコース培地で培養されたヒト膵癌細胞株では、正常グルコース培地と比較して、FOXM1の発現は抑制され、claudin-1の発現は増強した。加えて、上皮バリア機能は強化され、細胞浸潤や細胞遊走は抑制された。また、siRNAを用いてFOXM1を抑制すると、同様の結果が得られた。 膵癌のEMTにおける糖代謝を調べるため、細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア代謝量を測定すると、低グルコース培養のPANC-1およびHPACでは、正常グルコース培養に比べ、代謝量は高かった。これは他の癌種では認めない膵癌特有のエネルギー代謝機構と考えられ、これが膵癌の治療抵抗性に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種実験から、正常ヒト膵管上皮細胞および膵癌細胞株において、FOXM1によるタイト結合タンパク発現の変化や、糖代謝における膵癌の特異性を示唆する結果が順調に得られている。当初予測されていたKLF4がFOXM1を抑制し、膵癌の悪性化を妨げる効果を示す明らかな結果は得られておらず、作用機序は不明である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き正常ヒト膵管上皮細胞と膵癌細胞株を用いた各種実験を行いつつ、抗癌剤や糖尿病薬における膵癌細胞の糖およびミトコンドリア代謝の変化を検討し、代謝の面から膵癌の新規治療法の開発につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、正常膵管上皮細胞培養系および膵癌細胞株を用いた各種実験を予定しており、その実験物品費、国内学会での発表を予定しているので学会旅費、実験データの論文化に関わる諸経費、および雑費が必要であり、今年度使用額が生じた。
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