2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞が関与する胃癌腹膜播種の分子機構の解明と新たな診断薬の開発応用
Project/Area Number |
18K16324
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
庄田 勝俊 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70783421)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胃癌 / 脂肪細胞 / exosome / 腹膜播種 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹膜播種性転移は、最も多い胃癌の転移形式であるが、発症メカニズムについては未だ不明な点が多い。我々はこれまでに、癌から放出される細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EV)が腹膜中皮細胞の発現を変化させ、播種形成に関与する可能性を報告した。本研究では、腹腔内に豊富に存在する脂肪細胞と胃癌細胞や腹膜中皮細胞との、EVを介した細胞間情報伝達に着眼し、その分子機序解明により脂肪細胞を標的とした新規治療の可能性を検討するとともに、腹膜播種形成予測に有用な新規バイオマーカーとしての意義を検証することを目的とする。 間葉系幹細胞から脂肪細胞に分化させ、oil red染色を用いてその分化を確認した。胃癌細胞株と脂肪細胞との共培養で胃癌細胞株の遊走能が有意に上昇した。 次に脂肪細胞を介した腹膜播種形成における関連分子を探索するため、癌細胞由来EVの脂肪細胞への取り込みの確認、及び脂肪細胞の発現変化の検討を行った。 胃癌細胞株の培養液中のexosomeを、超遠心法により分離し、PKHによるexosomeの蛍光ラベリングを行った後、分化させた脂肪細胞に添加し、細胞内へのexosome 顆粒の取りこみを確認した。 共培養前後の脂肪細胞のmRNAの発現変化についてmicroarray解析を行った。炎症に関与する分子群の上昇を認めた。候補分子に関してreal-time PCRを用いた検 討においても、胃癌細胞と共培養した脂肪細胞で、炎症に関与する分子群が上昇していることを確認した。また、胃癌細胞と共培養した脂肪細胞から放出される EV内にこれらの分子が内包されていることを確認した。胃切除症例における大網からRNAを抽出し、これら炎症関与分子の発現を確認したところ、腹膜播種や細胞診陽性症例で有意に高値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
間葉系幹細胞から脂肪細胞に分化させ、oil red染色を用いてその分化を確認した。胃癌細胞株と脂肪細胞との共培養で胃癌細胞株の遊走能が有意な上昇を確認し、 脂肪細胞を介した腹膜播種形成における関連分子を探索するため、癌細胞由来EVの脂肪細胞への取り込みの確認、及び脂肪細胞の発現変化の検討を行った。 胃癌細胞株の培養液中のexosomeを、超遠心法により分離し、PKHによるexosomeの蛍光ラベリングを行った後、分化させた脂肪細胞に添加し、細胞内へのexosome 顆粒の取りこみを確認した。 共培養前後の脂肪細胞のmRNAの発現変化についてmicroarray解析を行い、炎症に関与する分子群の上昇を認めた。候補分子に関してreal-time PCRを用い、胃癌細胞と共培養した脂肪細胞で、炎症に関与する分子群が上昇していることを確認した。また、胃癌細胞と共培養した脂肪細胞から放出される EV内にこれらの分子が内包されていることを確認した。胃切除症例における大網からRNAを抽出し、これら炎症関与分子の発現を確認したところ、腹膜播種や細胞診陽性症例で有意に高値であった。 以上の結果から胃癌細胞と脂肪細胞との間でexosomeなどによる細胞間情報伝達が行われ、胃癌細胞の悪性化に関与していることが示された。本研究計画に概ね沿う形で研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
腹膜播種に関与する脂肪細胞と癌細胞、および中皮細胞との細胞間情報伝達において、mRNAの発現解析を行ってきたが、exosomeに内包されるmicroRNAに関しても解析を行う。 また、手術時に腹水細胞診陰性であった進行胃癌患者100例の腹水中exosomal RNAを用いて、上記候補microRNA発現と腹膜播種再発率を検討する。術後3年以上経過している症例を対象とする。腹膜播種予測マーカーとしての腹水中microRNAの有用性を検討する。 脂肪細胞との共培養で遊走能が上昇した胃癌細胞に対して、上記候補microRNA inhibitorによる遊走能抑制効果を検討する。 胃癌細胞株を用いた腹膜播種モデルマウスを作成し、候補microRNA inhibitor腹腔内投与を行う。腫瘍容積変化を測定、microRNA inhibitorの腹腔内投与による胃癌転移抑制効果を確認、新たな治療法としての可能性について検討する。アテロコラーゲンの併用など投与法による効果増強に関しても検討する。
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