2019 Fiscal Year Research-status Report
Cell surface glycan analysis of scirrhous gastric cancer
Project/Area Number |
18K16340
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
明石 義正 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50709722)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖鎖 / レクチン / スキルス胃癌 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
(内容)難治性スキルス胃癌に対して癌細胞の膜タンパクよりも最外層に豊富に表出している無数の糖鎖を標的とした新規治療の開発を目的に研究を開始した。胃癌細胞に特異的に発現する糖鎖を、スキルス癌由来の細胞株と非スキルス癌由来の細胞株で比較。レクチンマイクロアレイで網羅的探索を行ない19種類の候補糖鎖を選別した。 その中でスキルス胃癌で発現の高い糖鎖に結合するBPLと呼ばれるレクチンが候補レクチンとして選別された。臨床手術検体のプレパラートを用いて、スキルス癌と通常型腺癌の腫瘍組織および正常組織のそれぞれに対して同様のレクチンマイクロアレイを実施し、この糖鎖が胃癌組織に高頻度に結合することが判明した。 BPLレクチンを抗腫瘍標的治療のリガンドとして応用できるかの可能性を検討するため、血液凝集検査を実施したところこのレクチンはO型血液を除く血液において凝集反応を示したことから生体内への投与は困難であることが確認された。 そのため、当初は抗腫瘍標的治療法として研究を開始したが、今後の研究指針としてこのレクチンを患者血液等から検出リキッドバイオプシーとしての臨床応用可能性の検討、及びBPL以外の生体内投与可能な新規レクチン探索の継続の2つの方針で研究を進めている。
(意義)胃癌細胞を対象としたレクチンマイクロアレイによる糖鎖発現解析は数編の既報があるが、それらはいずれも対象を胃癌全体としており、病理組織型の違い、遺伝子型の違いなどで分類したものはなく、スキルス癌と通常型胃癌で糖鎖発現が異なるかどうかは未だ明らかとなっていない。今回スキルス癌に高頻度に結合したBPLレクチンは病理組織所見を生検等で確認しなくても組織型を予測できる可能性があり、さらには血液中での検出が可能となれば低侵襲な検診及び治療判定効果予測等へのバイオマーカーとして臨床応用できる可能性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた研究のうち、スキルス胃癌特異的な糖鎖発現及びそれと結合するレクチンの探索については予定通り進捗している。一方で、研究計画では担癌モデルマウスを作成してレクチンと化合物を結合させた新規薬物治療法へむけて研究を進展する予定であったが、( 1)スキルス胃癌モデルマウスの樹立において、腫瘍発育が安定せずにモデルとして十分使用する段階へ進めることが遅れていること、 (2)血液凝集素反応において候補レクチンとして選別されたBPLレクチンがO型血液を除く血液において陽性反応を示したことから、生体への投与が不適であることが判明。 以上の2点から、研究計画の修正を余儀なくされ、それに伴い若干であるが研究進捗が当初より遅れている。 現在下記の「今後の方策」に示すように研究計画を修正し、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)スキルス胃癌特異的レクチンのリキッドバイオプシーへの応用についての探索 先に述べたように、スキルス胃癌において非スキルス胃癌と比較して特異的に発現する糖鎖と結合するレクチンとしてBPLレクチンが第一候補に選別されたが、これ自体は血液凝集を誘導するため生体への投与は不可能である。そのため、現在はこの糖鎖発現を腫瘍組織だけでなく、患者血液や尿などから検出するリキッドバイオプシーとしての臨床応用についてその可能性を探索する。現在臨床試験として実施するための研究計画を策定中であり、所属施設の倫理委員会で承認を得たのちに実施を検討している。 2)BPL以外の候補レクチンの選別 スキルス胃癌特異的結合レクチンの第一候補が上記のBPLレクチンであったが、こちらは生体投与が不能であることから当初計画した腫瘍標的薬物治療としての応用は不可能であった。そのため、現在第2、3候補のレクチンについてこれらが腫瘍標的治療へと応用できないか、その可能性について血液凝集素反応を含めて検討を実施している。
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Causes of Carryover |
動物実験の進捗が当初計画より遅れたため、残額が生じそのため次年度への繰越申請を提出させていただき承認をいただいた。そのため、研究計画を少し修正してリキッドバイオプシーとしての臨床応用探索ならびに次点候補のレクチンを用いた研究を継続実施する予定である。
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