2018 Fiscal Year Research-status Report
前臨床マウスモデルを基盤としたスキルス胃がんの多角的治療戦略の開発
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18K16346
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
島田 周 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20609705)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スキルス胃がん / 分子標的治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんで特異的に活性化しているシグナル経路を阻害する分子標的治療が注目されている。一方、スキルス胃がんは予後が悪いにもかかわらず、有効な分子標的治療は確立されていない。我々は、ヒトスキルス胃がんを病理学的にも分子生物学的にもよく模倣するマウスモデルを作製し(Shimada et al. Gut 2012)、その胃がん由来細胞株も樹立した(Shimada et al. Br J Cancer 2018)。このマウスモデルと細胞株を利用して、スキルス胃がんで活性化しているシグナル経路を同定し、その分子標的治療薬の効果を検証する。 最初に、バイオインフォマティクス解析を利用して、マウスの正常胃粘膜上皮と胃がん原発巣の遺伝子発現を比較した。Gene Set Enrichment Analysisでは、DCKOマウスの胃がんでは①液性増殖因子(RTK/RAS/MAPK)、②上皮間葉転換(TGFβ/SMAD)、③炎症(IL6/STAT3、TNFα/NFκB)などのシグナル経路が活性化していると予測された。次に、DCKOマウスの胃がんの組織切片に対して免疫染色を行い、上記のシグナル経路の活性化を評価したところ、一部の細胞がpErk陽性(RTK/RAS/MAPK経路)であり、多くの細胞がpSmad2陽性(TGFβ/SMAD経路)、pStat3陽性(IL6/STAT3経路)であった。マウス正常胃粘膜由来GE細胞株とマウス胃がん由来GC細胞株に対してwestern blotting解析を行ったところ、GC細胞株はpErk, pStat3陽性であった。そこで、細胞株にMEK阻害剤, STAT3阻害剤を処理したところ、MEK阻害剤はGC細胞株特異的に作用した。以上より、スキルス胃がんでは、RTK/RAS/MAPK経路が活性化しており、それゆえ、MEK阻害剤が著効する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スキルス胃がんで活性化しているシグナル経路としてRTK/RAS/MAPK経路が同定された。その経路を阻害する薬剤としてMEK阻害剤が開発されているが、本剤がスキルス胃がん特異的に増殖抑制作用を示すこともin vitroで確認された。現在は、MEK阻害剤が増殖能だけでなく、遊走能・浸潤能・スフェア形成能にも影響するか解析している。初年度の目標であるシグナル経路の同定とその阻害剤のin vitroでの有効性評価まで解析が進んでおり、進捗は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、GC細胞株の免疫不全マウス皮下移植腫瘍モデルを利用して、MEK阻害剤のin vivoでの有効性評価を行う。MEK阻害剤が有効であれば、その遺残組織の間質・血管・免疫などの微小環境の変化を解析する。また、他のシグナル経路についても、サイトカイン存在下(TGFβやIL6)では異なる挙動を示すことを示唆するデータを得ており、サイトカイン投与下での遊走能・浸潤能・スフェア形成能を評価し、阻害剤の同時投与によりどのような影響が生じるか解析する。
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Causes of Carryover |
免疫不全マウス皮下移植腫瘍モデルでの薬剤の有効性評価で使用する、実験動物と低分子化合物の購入代を次年度で使用する。
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