2018 Fiscal Year Research-status Report
三次元ゲノム構造を介した幹細胞マーカー発現制御メカニズムの解明
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18K16360
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 和 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20781793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エンハンサー領域 / enChIP法 |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞関連遺伝子のようなある分化段階で特異的に発現する遺伝子の発現制御がプロモーター・エンハンサーループをはじめとした三次元ゲノム構造によって行われていることが近年明らかになってきている。そこで、本研究は大腸癌幹細胞関連遺伝子の三次元ゲノム構造を介した発現制御メカニズムについて明らかにし、新たな治療法の開発につなげることを目的としている。私たちは大腸癌幹細胞関連遺伝子として報告されている遺伝子のうち、頭頸部癌においてプロモーター・エンハンサーループの存在が報告されているKLF5遺伝子に着目した。そして、平成30年度は大腸癌細胞株におけるKLF5遺伝子の発現制御に関わるエンハンサー領域の同定に取り組んだ。エンハンサー領域を同定するための手法として、Cas9タンパクがガイドRNAを介して特定のゲノム領域に結合できる性質を利用して、特定のゲノム領域と相互作用をする領域を同定することができるenChIP (engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation) 法を用いた。enChIP法を行った結果、KLF5遺伝子プロモーターと結合するKLF5遺伝子のエンハンサー候補領域を同定することができた。次に、その領域のエンハンサーとしての機能を解析するためにゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いてエンハンサー候補領域の欠失変異体を作製した。欠失変異体におけるKLF5遺伝子の発現を検討すると、発現低下が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LGR5、LRIG1、BMI1、KLF5などいくつかの遺伝子が大腸癌幹細胞関連遺伝子として報告されているが、本研究ではその中でも他癌種において三次元ゲノム構造による遺伝子制御機構の存在が示唆されているKLF5遺伝子に着目して研究を進めることとした。KLF5遺伝子のプロモーター領域に対するガイドRNAを用いてenChIP法を行い、次世代シークエンサーによる解析を行った結果、大腸癌細胞株においてKLF5遺伝子のプロモーター領域と結合するエンハンサー候補領域を同定することができた。次にこの領域をCRISPR/Cas9システムを用いて欠失させたところ、欠失変異体においてKLF5遺伝子発現が低下していた。大腸癌幹細胞関連遺伝子のエンハンサー領域を同定するという本研究の目的の一つは達成され、ゲノム編集技術を用いた実験手技も確立できたことから、計画は順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はKLF5遺伝子のプロモーター領域、今年度同定したエンハンサー領域に結合するタンパク質、non-coding RNAを網羅的に解析し、本研究計画のもう一つの目的である三次元ゲノム構造を介したKLF5遺伝子の発現制御に関わる分子メカニズムの解明に取り組む予定である。その結果として三次元ゲノム構造を標的とした新たな治療法の開発につながることが期待できる。また、大腸癌臨床検体 (手術検体) を用いて、今年度同定したプロモーター・エンハンサー結合が臨床検体においても起きているかについても検討を行い、その臨床的意義などについても明らかにしていく予定である。
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