2018 Fiscal Year Research-status Report
Dclk1を標的とした癌幹細胞に対する新しい核酸医薬の開発
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18K16361
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻村 直人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10804198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MicroRNA / DCLK1 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は、自己複製能・造腫瘍能・多分化能を有し、抗癌剤や放射線治療に抵抗性を示し再発・転移を繰り返す原因となる。CD44, CD133などの細胞表面マーカーが癌幹細胞の絞り込みに使われるが、この方法では相当数の非癌細胞も混じることが問題となっている。癌幹細胞の治療開発には、癌細胞集団の中で極めて少数である真の癌幹細胞を同定する必要があるが、少数の細胞しか得られないということが治療薬剤開発の障壁となっている。私達は癌幹細胞濃縮法を開発し、少数の癌幹細胞をstemnessを維持したまま段階的にスケールアップすることに成功した。これにより癌幹細胞を用いた各種のアッセイが可能となり、治療剤候補の選出、治療効果の評価などが容易となった。本研究では、正常幹細胞には発現せず癌幹細胞特異的に発現するDclk1を標的とするmicroRNA(miRNA)候補をin silicoでピックアップし、Dclk1を標的とした癌幹細胞に対する新しい核酸医薬の開発を目的とした。大腸癌の親株とODC degron systemを導入した癌幹細胞モデル細胞に32種類のmiRNAをふりかけ、親株のみならず癌幹細胞モデル細胞の増殖をよく抑制したmiRNAが4種類得られ、この中で大腸癌での報告のないmiR-1291に注目した。miR-1291をHCT116, HT29, DLD1大腸癌細胞に作用させると、いずれの細胞でも浸潤能、遊走能、コロニー形成能の低下を認めた。またmiR-1291をHCT116に作用させると、qRT-PCRおよびwestern blottingによってDclk1 mRNAとDclk1蛋白の低下を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常幹細胞には発現せず癌幹細胞特異的に発現するDclk1を標的とするmicroRNA(miRNA)候補をin silicoで選択し、in vitroで32種類のmiRNAについて抗腫瘍効果を示すかどうかを検討した。 まず9種類の大腸癌細胞株を用いてqRT-PCRで選択したmiRNAの発現が正常細胞株HEK293より発現の低い細胞株を7種類確認し、そのうち3種類(DLD1、HT29、HCT116)の大腸癌細胞を実験に用いた。大腸癌細胞株に、miR-1291を導入し、WST assay、invasion assay、colony formation assayを行い、いずれの細胞でもmiR-1291を導入した方で、浸潤能、遊走能、コロニー形成能の低下を認めた。Western blottingでは、miR-1291を導入によってp27Kip1, p21Waf1/Cip1などの細胞周期チェックポイント蛋白の増加とDclk1蛋白発現の低下を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌細胞株に対し、miR-1291は抗腫瘍効果を示した。miR-1291添加によりDclk1の蛋白、mRNA発現が低下したことからDclk1 mRNAの3’UTR領域との直接結合をルシフェレースレポーターアッセイで確認する。更に癌幹細胞濃縮法によって得られた癌幹細胞集団にこのmiR-1291を作用させ、細胞増殖、浸潤能、遊走能、コロニー形成能などの抗腫瘍効果とともに各種の癌幹細胞マーカー発現やROS産生、抗癌剤感抵抗性などの癌幹細胞性質への影響を調べて研究を完成させる予定である。
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