2018 Fiscal Year Research-status Report
微小環境の改変による難治性がんに対する治療基盤の構築
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18K16377
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中嶋 幸生 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (80785775)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難治性がん / がん微小環境 / 網羅的分子解析 / 有効化合物の同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のがん診療において、診断された時点ですでにがんが進行している場合や、早期の段階で診断され手術が実施できたとしても再発や転移のため根治が難しい場合がある。これらはいわゆる難治性がんと呼ばれており、具体的ながん腫としては、一部の骨軟部腫瘍、スキルス胃がん、膵臓がんなどが挙げられる。難治性がんに対しては、特に全身療法の改善が早急の課題であり、本研究においては全身治療の一つである免疫治療をより円滑に作用させる新しいコンセプトの治療法の開発に着手した。免疫応答には、免疫細胞ががん組織内へと透過することが必須であり、がん微小環境中の血管内皮細胞が制御している。本研究の目的は、がんの血管内皮細胞の性質を変化させることにより、抗腫瘍免疫細胞をがん組織内に円滑に輸送する技術を開発することである。 研究計画は次の5段階として開始し、実績としては下記の通りである。①国立がん研究センターにおいて切除された難治性がんの手術検体から、腫瘍細胞、腫瘍血管内皮細胞、腫瘍関連線維芽細胞、腫瘍浸潤リンパ球を個別に分離して培養する技術を確立した。②網羅的発現解析を行い、腫瘍血管内皮細胞における特徴的な発現分子・パスウェイを明らかにした。③該当した分子について、約100例の臨床検体を用いて盲検下に検討し、患者予後との相関があることを確認した。④該当したパスウェイをターゲットとする化合物のライブラリを企業と協力して構築し、スクリーニングすることによって、免疫細胞の腫瘍血管内皮細胞への接着・透過を促進させる化合物を同定した。現在、次なる段階として、⑤難治性がんのモデルマウスに候補化合物を投与し、その効果を評価している。 今後は、難治性がんの治療成績の向上を目指して、既存の免疫治療である免疫チェックポイント阻害剤などとの併用することにより、がんに対する免疫応答を最大化させるための臨床応用へ進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における研究計画、および上記に記した①~⑤の段階のうち、現在①~④を既に完了しており、⑤を実施中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、難治性がんのモデルマウスに候補化合物を投与し、その効果を評価している。今後は、難治性がんの治療成績の向上を目指して、既存の免疫治療である免疫チェックポイント阻害剤などとの併用することにより、がんに対する免疫応答を最大化させるための臨床応用へ進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
予測していたよりも研究の進行状況が順調であったため、次年度分を前倒して請求したことによる。
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