2018 Fiscal Year Research-status Report
自家静脈グラフト弁部内膜肥厚に関与する細胞同定とその機能解明
Project/Area Number |
18K16380
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
菊地 信介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80596297)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 閉塞性動脈硬化症 / バイパス術 / 自家静脈 / グラフト狭窄 / 静脈弁 / 大伏在静脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
下肢動脈閉塞硬化症により生じる下肢虚血症状の内、間欠性跛行や重症虚血に対して血行再建が行われるが、この際に使用される大伏在静脈はその開存性は良好であるが、約20%の割合で狭窄や閉塞が生じる。この事象は、静脈が突然動脈圧の環境に投じられたことによるグラフトの生理的反応が基礎にあり、動脈圧に耐えうる壁肥厚を目的に生じるが、場合によってはブレーキが効かない進行性内膜肥厚により有意狭窄を生じた結果、グラフト閉塞に陥る。この好発部位として、静脈に元々逆流防止を目的として存在する静脈弁が挙げられる(全体の狭窄病変の20%程度)。冠動脈及び下肢動脈バイパスに使用された大伏在静脈を用いたex-vivo研究で弁部は、非弁部に比較して有意に遊走能が亢進しており、組織から抽出した細胞(主に平滑筋細胞)を用いたin-vitroでは、弁部由来細胞の増殖能、遊走能が有意に亢進し、組織片の結果と一致したが、この細胞表現型の違いは、PDGFBBによる刺激により共発現したFGF2が、弁部におけるさらなる増殖能亢進に寄与していたことがin-vitroでわかったが、本メカニズムは組織片のex-vivo研究で無効であった。そのため、組織及び細胞レベルで、弁部と非弁部由来組織及び細胞のRNAシークエンスを行った結果、そのほとんどが共通しない遺伝子発現であったが、唯一2遺伝子のみが一致した。その内の一遺伝子はDSP(Desmoplakin)という遺伝子であったが、組織と細胞間で全く反する発言形態であった一方で、KRT7(Keratin7)は同様の発現形態であり、KRT7をターゲットした機能解析を次年度を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織から直接遊走した細胞を用いて、免疫染色を通じた細胞内タンパク発現の評価にて、弁部、非弁部の違いを評価する予定であったが、ターゲットの同定に至らない可能性もあるため、はじめに網羅的遺伝子解析を行う事で、弁部、非弁部及び組織、細胞における弁部機能亢進のを説明し得る遺伝子を突き止めた。機能解析をすることで、今後機能亢進のメカニズムを証明できる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
KRT7をターゲットとした機能解析だが、keratinは細胞骨格を調節している因子であり、これが明らかに非弁部に比べて弁部の組織及び細胞で発現が低下していた。これは所謂、より遊走や増殖のしやすい細胞骨格(表現型の変化)に変化していることを示唆する。機能解析では、非弁部細胞を用いてKRT7を共発現することでの機能評価を行い、逆にsiRNAを用いた機能抑制により表現型の違いがでるかを確認する。さらにKRT7が関与する遺伝子をin silico解析で予想し、メカニズムに関わるパスウェイを同定したい。次年度は遺伝子修飾を行った上での機能解析がメインとなる。
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Research Products
(1 results)