2020 Fiscal Year Research-status Report
M1マクロファージからM2マクロファージへの形質転換を介した大動脈瘤治療の試み
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18K16384
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70718311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / マクロファージ / 形質転換 / 抗炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈瘤は破裂すると救命が極めて困難な疾患で、治療は破裂の予防であるが、現状の外科的・内科的治療には限界があり、新たな治療法の開発が望まれている。研究代表者らは、間葉系幹細胞(MSC)静脈内投与による大動脈瘤治療の有効性を示してきた。治癒メカニズムにはMSCのパラクライン作用が示唆され、大動脈瘤病変部位で直接作用しているのはMSCではなく、抗炎症性M2マクロファージ(M2MF)であると推察できた。そこで、通常、大動脈瘤病変部位には、炎症性M1マクロファージ(M1MF)が集積しており、これをM2MFへ形質転換させることが、治療戦略として成り立つのではないかと考えた。形質転換因子として、①M2MF誘導因子(IL-4/IL-13)、②M2MF細胞、③M2MF培養上清、④M2MF由来エクソソームに着目した。本研究では、M2MFによる大動脈瘤治療の是非と、どの因子がM1からM2への形質転換を促進し、大動脈瘤治療効果が得られるのかを明らかにすることを目的とする。 これまでのin vitro, ex vivoの結果から②M2MF細胞が最も効果が得られたことから、in vivoにて大動脈瘤モデルマウスにM2MF腹腔内投与を行った。効果の比較のためcontrol群として生理食塩水を投与した。投与2, 4週間後にエコーで大動脈瘤径測定したところ、control群にくらべ M2MF群で有意に瘤径拡大を抑制した。4週間後に屠殺し、大動脈瘤組織中のタンパク発現量測定、MMPs活性測定を行ったところ、control群に比べてM2MF群で炎症性タンパクIL-1β, IL-6, TNF-α 発現量の低下や抗炎症性タンパクIL-4, IL-10発現量の増加、MMP-9活性の低下を認めた。また、組織切片のEVG染色を行い、エラスチンエリアを評価したところ、control群に比べM2MF群でエラスチン分解が有意に抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり遂行していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
組織切片評価やcell trackingなど、in vivo検討の評価を引き続き行う。また得られた成果を国内外で公表するため、学会発表や英語論文発表の準備を行う。
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Causes of Carryover |
成果発表や情報収集のために旅費を計上していたが、参加した学会や研究会はweb参加だったため予定していた使用額と差が大きく生じた。また、本年度に成果をまとめて論文報告を行う予定で英文校正費や投稿費用を予定していたが、投稿が次年度にずれ込んだため、次年度使用額に差が生じた。次年度では、動物実験の追試や成果報告を行うための費用として用いる予定である。
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