2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16406
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
金本 亮 久留米大学, 医学部, 助教 (70817353)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 腹部大動脈瘤 / Spleen Tyrosine Kinase / B細胞 / γグロブリン / IL-6 / MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
腹部大動脈瘤の手術時にヒト大動脈瘤組織を採取した。瘤の最大径部分と、正常径に近い部分の2ヶ所より採取し、採取した大動脈瘤壁の組織標本を作製し、組織学的検討を行った。大動脈瘤壁におけるSykの活性と局在を明らかとするため、活性化Syk(pSyk)と各種サイトカインの免疫組織染色を行った。結果、大動脈瘤組織の最大径部分において、膠原繊維や平滑筋細胞の正常な構造は完全に失われており、外側中膜及び外膜に炎症細胞浸潤を認めた。免疫染色において、瘤壁外側の炎症細胞浸潤はB細胞、T細胞、マクロファージから成り、同部にpSykが集簇して発現していた。一方で、正常径部分においては、膠原繊維の正常構造は最大径部分と同様に失われていた病的血管であったが、平滑筋細胞は中膜の内膜側においては一部残存していた。免疫染色において、同部に一部Sykが活性化していた。瘤最大径部分の蛍光免疫二重染色において、pSykは主にB細胞に発現しており、一部マクロファージにも発現していた。しかし、T細胞にはほとんど発現を認めなかった。 さらに、該当年度以前の研究において、免疫グロブリンの投与により、ヒト大動脈瘤培養中のIL-6分泌とMMP-9発現が上昇し、Syk阻害剤の投与により、免疫グロブリンで促進されたIL-6分泌とMMP-9発現が抑制された。これらの結果は、免疫グロブリンがヒト大動脈瘤組織において炎症応答及び組織破壊性を促進し、その中でSykが中心的な役割を果たすことを示した。我々は、ヒト大動脈瘤病態におけるSykの重要な役割を実証するとともに、Sykが腹部大動脈瘤の有望な治療標的であると考えた。 現在、これらの知見を臨床応用できないか、開腹手術・ステントグラフト治療の双方で検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織学的検討、分子生物学的検討とも満足いく結果が得られた。今後、これらの知見を臨床応用できないか、開腹手術・ステントグラフト治療の双方で検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を臨床応用すべく検討を行いつつ、必要に応じて、さらなる組織学的検討、分子生物学的検討も追加する。
|
Causes of Carryover |
当該年度において、免疫染色、蛍光免疫染色等の追加実験のための各種抗体及び開学学会での発表にかかる費用として計上していた。コロナ禍や研究計画自体の遅れにより叶わなかったため、翌年度に海外学会出席としての費用や論文発表にかかる各種費用(統計解析に必要なPCや統計ソフト、英語翻訳・校正費用など)、臨床応用のための画像解析ソフト等に使用する予定である。
|