2018 Fiscal Year Research-status Report
ラット開胸モデルを用いた血小板活性抑制による癒着防止効果の検証
Project/Area Number |
18K16426
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
常塚 啓彰 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00453100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癒着 / 血小板 / 再手術 / アスピリン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,臨床データを用いてアスピリン内服症例での再開胸時の癒着抑制効果を後ろ向けに検討した.当院で行った同側肺の再切除症例を対象とし,アスピリン内服歴を含む,年齢,性別,術前化学療法投与歴,ステロイド投与歴などの臨床背景と再開胸時の癒着との関連を比較検討した.再開胸時に軽度の癒着である事と関連があった因子は,単変量解析で手術時間(<120分),アスピリン内服歴,化学療法投与歴,術後白血球数低値であった(p<0.05).また多変量解析では,アスピリン内服歴,化学療法投与歴が軽度癒着と関連を認めた(p<0.05).以上より,手術後のアスピリンの内服,術前化学療法投与歴は,同側肺再切除時に癒着が軽度である事と関連があると考えられた.また,癒着に関連する組織因子の検討を免疫染色で行うために,免疫反応関連マーカー(CD20:clone L26, CD8: clone CB/144B等)やサイトカイン(PDGF-β:clone ab16829)抗体の染色性の検証を行った. またラットに関する基礎実験の一部経過に関しては第35回呼吸器外科学会(千葉)で「ラット開胸癒着モデルでのアスピリンによる胸膜癒着抑制効果の組織学的検討」の演題名で報告を行った.ラット開胸癒着モデルを作成しアスピリン投与群において免疫染色等による組織学的な検討を行い,投与群でマクロファージでのPDGF発現や線維芽細胞のαSMA減弱を認め、アスピリンによる血小板由来サイトカインの減弱を確認した。これらの状況を踏まえ抗血小板作用を有するアスピリンによる癒着形成の抑制する可能性を報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに実験を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗血小板剤を追加し動物実験を行う予定である.実験方法は,胸膜癒着モデルを用いて薬剤投与での抗血小板作用により,癒着抑制効果があるか検討する.癒着誘発処置としては,開胸直下に10mm×5mmの焼灼処置を施し,抗血小板の薬剤としては,アスピリン(20mg/kg/day),クロピトグレル(10mg/kg/day),ダビガトランエテキシラート(15mg/kg/day)を内服させ,2週間後に再開胸した時の癒着距離を測定し,癒着抑制効果があるか検証する.また,組織学的検討として,PDGFα, PDGFβ,TGF-β, bFGF, EGF, VEGF, PAI-1, α-SMA の免疫染色を行い,それぞれの群間の比較を行う.癒着組織内の血小板活性因子としてp-selectinの発現をフローサイトメトリーで解析する予定である.
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