2018 Fiscal Year Research-status Report
抗うつ薬による内因性鎮痛機能の回復作用と遷延性術後痛に対する有用性の検討
Project/Area Number |
18K16436
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
太田 浄 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (30761100)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 内因性鎮痛機能 / ノルアドレナリン作動性神経系 / ムスカリン性コリン作動性神経系 / 脊髄後角 / 術後痛モデル / 遷延性術後痛 / 抗うつ薬 / アミトリプチリン |
Outline of Annual Research Achievements |
過去の研究結果から内因性鎮痛機能が著しく減弱化していることが示された、慢性期の神経障害性疼痛モデル(spinal nerve ligation)では、健側に足底切開による手術侵襲を加えた場合に、正常モデルと比較して、痛み逃避閾値が遷延化した。正常モデルでは術後14日目に切開前と同等の閾値まで回復するが、神経障害性疼痛モデルでは28日目に切開前の閾値に至った。正常モデルでは、内因性鎮痛機能のノルアドレナリン作動神経系およびムスカリン性コリン作動性神経系による鎮痛が、術後痛の回復促進に大きく寄与していたが(術後14,21日目における検証)、慢性期の神経障害性疼痛モデルではそれらの神経活動が全般に消失していたことが、術後痛の遷延化につながったと考えられた。神経障害性疼痛モデルに抗うつ薬アミトリプチリン(10 mg/kg/d)を5日間、反復投与すると、少なくとも1週間は内因性鎮痛機能を賦活化させることが示された。足底切開前後の13日間、アミトリプチリンを周術期投与することによって、神経障害性疼痛モデルにおける術後痛の遷延化の改善がみられた。その機序としては、ノルアドレナリン作動性神経系ではなく、ムスカリン性コリン作動性神経系の活動が関与していた。脊髄後角におけるノルアドレナリンおよびアセチルコリン神経伝達物質の含有量および、それらの合成酵素を含む神経軸索濃度に有意な変化はみられなかった。したがって、ムスカリン性コリン作動性神経系の機能的な変化が、術後痛の遷延化の改善に繋がっている可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗うつ薬アミトリプチリンの周術期投与によって、神経障害性疼痛モデルにおける術後痛の遷延化が改善されることを示した。その機序については、ノルアドレナリン作動性神経系の関与を想定していたが、予想に反してムスカリン性コリン作動性神経系が影響していた。さらに、神経伝達物質の測定や免疫組織学的検査による定量評価ではその根拠を示すに至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
アミトリプチリンによるムスカリン性コリン作動性神経系の機能的変化を評価するため、電気生理検査に着手する。Western blotting法による脊髄後角ムスカリン受容体のタンパク定量評価を追加する。
|
Causes of Carryover |
一部の実験結果が予想とは異なっため、その後の実験計画を変更したことが経費差異に至ったと考える。差額の研究費については、国際学会発表の経費およびWestern blotting法による脊髄後角ムスカリン受容体のタンパク定量評価の経費に充てる。
|