2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16440
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三ツ間 祐介 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (10815765)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄機能モニタリング / 運動誘発電位 / ドロペリドール |
Outline of Annual Research Achievements |
ドロペリドールは制吐作用を有し術後嘔気嘔吐対策として臨床使用されている。その主たる作用はドパミン受容体の抑制作用によると考えられているが、作用機序の詳細は明らかではない。様々な受容体に作用することでドパミンやセロトニンの作用を修飾し、その薬理作用を発揮すると思われるが、その核心に迫る研究はなされていない。研究代表者は、制吐作用を期待し用いた低用量のドロペリドールが、運動誘発電位(MEP)の振幅を著明に減少させることに気付いた。これを契機に、低用量ドロペリドールは皮質脊髄路のシナプス伝達機構を修飾する作用を有し、それによりMEP振幅を減少させる作用があるのではないかと仮説を立てた。 本仮説を検証するため、まず臨床研究に着手した。MEPによる皮質脊髄路全体の評価だけでなく、誘発筋電図を合わせて計測することで、 脊髄前角のシナプスから下位運動ニューロンの評価も行えるよう設計した。本学の倫理審査委員会の承認を受け、臨床研究推進センターの協力のもと、二重盲検無作為化比較対照研究を開始した。置換ブロック法によりランダム化を行い、被験者と担当医師を二重盲検化した。対象はASA 1-2, 特発性側弯症に対する後方矯正固定術を予定された, 12歳以上20歳以下の女性20名とした。割付に従って生理食塩液(NS)もしくはドロペリドール(DR)(20μg/kg)を投与しMEPを測定した。主要評価項目は試験薬投与前後の左前脛骨筋のMEP相対振幅とした。 DR群は10例、NS群は8例だった。データは中央値[四分位範囲]で表す。左前脛骨筋のMEP相対振幅は、NS群と比較しDR群で有意に減少した(DR:37%[30-55%]およびNS:76%[58-93%]、p <0.01)。低用量ドロペリドールは経頭蓋電気刺激によるMEP振幅をアラームポイント付近まで有意に減少させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究では想定より早く症例数を集めることができたため結果を早く出すことができた。また、低用量ドロペリドールがアラームポイント付近までMEP振幅を低下させることが分かった。そのため、低用量であったとしても、MEP記録中のドロペリドール投与のタイミングには注意を払うよう喚起が必要であることが分かった。 また、同時に計測していた誘発筋電図の結果から、ドロペリドールが脊髄前角においてその興奮性を抑制している可能性が示唆された。このことから、脊髄前角細胞からホールセルパッチクランプを行うことで、脊髄においてドロペリドールがどのように神経伝達機構を修飾したのか、その機序に迫ることができると考えられた。 以上より、臨床研究、基礎研究ともに順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄前角細胞からホールセルパッチクランプを行うに当たっては、幼若ラットを用いると顕微鏡下に前角細胞を同定することができるため、必要機材を手配した。ドロペリドールの主たる作用がドパミン受容体の拮抗であることに着目し、まずドパミンによる脊髄運動ニューロンの制御機構を電気生理学的に検討することとした。その上で、ドロペリドールを使用する方針である。
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Causes of Carryover |
次年度に基礎研究を進める際の物品、薬品、実験動物の購入などの支出に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)