2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16447
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
甲斐 慎一 京都大学, 医学研究科, 助教 (30770177)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 硫化水素 / 代謝 / ICU-AW |
Outline of Annual Research Achievements |
分化誘導させたマウス筋芽細胞(C2C12細胞)を用いて、ICU-AWモデル(LPS投与、低酸素暴露、ステロイド投与)における実験系を確立した。筋萎縮の評価として、免疫染色による筋肉細胞の直径測定やウエスタンブロッド法を用いたミオシン蛋白発現量の解析を行なった。また、ユビキチンプロテアソーム系による蛋白分解に関与するAtrogin-1, MuRF遺伝子の発現量をRT-PCR法で、また筋萎縮に関連する各種蛋白質(STAT3のリン酸化、C/EBP、FOXOなど)の発現量をウエスタンブロッド法で評価した。各種刺激は蛋白分解亢進による筋萎縮を引き起こしたが、チオ硫酸ナトリウムは各種刺激による筋萎縮を抑制しなかった。 そこで、マウスによる実験系の確立を試みた。C57BL/6マウスを用いてLPS投与を行い骨格筋(前脛骨筋、腓腹筋)、また血清を採取した。現在、in vitro実験で解析した各種蛋白や遺伝子発現量を解析して筋萎縮による評価を行なっている。実験系を確立させれば、チオ硫酸ナトリウムをマウスに腹腔内投与しその抑制効果を評価する予定である。 今後、評価方法に二つ項目を追加する予定である。一つは炎症性サイトカイン(特にIL-6)の関与についてである。マウスの実験では、血中のサイトカイン濃度と筋肉細胞から産生されるIL-6発現量にわけて測定し筋萎縮への影響を評価する。もう一つは、ミトコンドリア機能である。ミトコンドリア機能評価として、RT-PCR法を用いたミトコンドリア量の比較、また酸素消費量の測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
C2C12細胞を用いたin vitroの実験では、チオ硫酸ナトリウムの筋萎縮への影響は示すことができていない。今後さらに検討を続けるが、in vivo実験としてマウスを用いた実験も開始している。現在、マウスを用いた筋萎縮モデル(LPS投与)を確立している段階であり、各種評価を行なっている。実験系が確立すれば、チオ硫酸ナトリウムを投与し筋萎縮への影響を評価する予定である。 各骨格筋採取の習得(腓腹筋、前脛骨筋を分ける)、LPSなどの投与量・経過時間の条件検討などに時間がかかっていた。今後の進行については、C2C12細胞で筋萎縮に関係する蛋白や遺伝子の発現量について解析は行なってきており、問題なく遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実験を推進していくために以下の三つの方法を用いて実験を推進させる。 一つめは、in vitro実験の確立である。これまでのC2C12細胞を用いたin vitoro実験ではチオ硫酸ナトリウムの筋萎縮に対する効果は確認できていない。そこでマウスを用いた実験によりチオ硫酸ナトリウムの効果の評価を試みる。すでにマウスによる実験系はある程度確立できており、今後筋萎縮による評価を行なっていく予定である。 二つめは、分化誘導前のC2C12細胞を用いた分化誘導への影響の検討である。ICU-AWにおいては分化誘導にも影響を与えることがこれまでに示されている。これまで分化誘導させたC2C12細胞のみで効果を検討してきたが、今後は分化誘導への影響を評価対象に含める予定である。筋芽細胞から筋管細胞へ分化する過程で、Myogenin.MyoDといった蛋白が関与する。現在、ウエスタンブロッドによる発現量の変化を検討し始めたところであり、その影響についてこれまで行なってきた評価項目も含めチオ硫酸ナトリウムの効果を検討していく。 三つめに、筋肉細胞が産生するサイトカインの発現量の検討である。これまで、LPS投与などによる実験系を確立してきたが、その過程で筋肉細胞がサイトカインの中でもIL-6の発現量を増加させることが明らかになってきた。今後は、外から与えられたIL-6と筋肉細胞が産生したIL-6が筋萎縮に与える影響を比較しつつ、チオ硫酸ナトリウムがどのように影響を与えるかを評価していく。
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Causes of Carryover |
in viro実験のみでチオ硫酸ナトリウムの効果を確認するには難しいと考え、マウスを用いた実験に変更することになった。しかし、動物実験を行うための準備に時間がかかってしまったことや予備実験に時間を費やしたことから実験の進行が遅れた。今後は、マウスの実験とともにin vitro実験についても新たなアプローチ(分化誘導への影響、サイトカインの発現変化)で実験を進行させていく予定である。 今年度使用しなかった研究費については、動物実験の予備実験が終わったことによる実験の進行とあin vitro実験を新たなアプローチで行うための試薬購入に当てる予定である。
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