2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K16452
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
住江 誠 九州大学, 大学病院, 助教 (60792918)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グリシン / ストリキニン / 興奮性シナプス後電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウレタンで麻酔した5-8週齢のSDラットから脊髄スライス標本を作製した。脊髄後角の第2層にマイクロマニュピュレータを使用してガラス電極を刺入し、第2層の膠様質細胞からホールセルパッチクランプ記録を行った。-70mVの電位固定で膠様質細胞の膜電位を観察すると、微小興奮性シナプス後電流が観察された。-50mVの電位固定で0.4mM、2mM、4mMのグリシンを潅流投与したところ、外向き電流の発生が認められた。これは電流固定法における細胞膜の過分極を意味する。また微小興奮性シナプス後電流の発生頻度が抑制された。2mMでは発生頻度は約40-60%に低下した。0.4mMでは約85-95%に低下、2mMでは18-48%に低下、4mMでは7-38%に低下した。グリシン受容体拮抗薬であるストリキニンを10μM投与すると、微小シナプス後電流の発生頻度は約100-120%に増加した。このストリキニン作用下でグリシンを投与すると、0.4mM、2mM、4mMでは微小興奮性シナプス後電流の発生頻度は100-120%であり、抑制は認めなかった。微小興奮性シナプス後電流の発生頻度はシナプス前からの興奮性伝達物質の放出頻度を表している。シナプス外から投与されたグリシンが、シナプス前のグリシン受容体に作用し、膜を過分極させることで、シナプス前からの興奮性神経伝達物質の放出を抑制していることが明らかとなった。このことは末梢神経からの電気刺激によってシナプス前での活動電位を発生させずとも、刺激がない状態での自発性の神経伝達を抑制していることを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説通りの結果となっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄へのグリシンの灌流投与によって興奮性シナプス後電流の頻度が抑制されることが示された。容量依存性に頻度の低下が認められることが確実ならば、後根からの電気刺激による誘発性の興奮性シナプス後電流の変化を観察せずとも、シナプス前にグリシン受容体が存在しシナプス伝達における調整機能を証明しうる可能性が出てきた。 さらに濃度の幅を広く設定して研究を継続する。
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