2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子多型による化学療法後末梢神経障害の感受性の相違
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18K16478
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 果林 京都大学, 医学研究科, 助教 (70782639)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CIPN / 漢方薬 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、複数の化学療法剤による重篤で衰弱性の合併症であり、がんの診断名を問わず、あらゆる年齢の患者に発症する可能性がある。CIPNは治療後も持続し、がんサバイバーの健康状態やQOLに大きな影響を与える可能性がある。CIPNを評価するための標準的で客観的指標がないため、CIPNのリスクを有する患者を治療前に予想することは困難である。さらに、CIPNに対する予防的な治療法もない。このため、治療前予測因子、化学療法用量規定因子としての遺伝子変異について明らかにすることを目標としている。本研究よりさらに規模の大きな研究でも見解が異なる研究結果が相次いで行われている。タキサン系薬剤やビンカアルカロイドは微小管機能を阻害し、CIPNの発症につながる可能性があり、微小管機能をコードする遺伝子はCIPN感受性の予測因子として研究されてきた。CEP72のSNP(rs924607)は、CIPNと関連しているといういくつかの研究がある一方で、CEP72の変化を評価した他の研究では、CIPNとの関連は見つからなかった。 同様に、チューブリンをコードするTUBB2Aの多型は、パクリタキセルでのCIPNと関連しているとの研究がある一方で、タキサン系薬剤とビンカアルカロイドを用いた他の研究では再現されていない。MAPTとGSK3Bの個々の多型は、タキサンやビンカアルカロイドで治療した患者のCIPNと関連していないが、MAPTとGSK3Bの相加的多型は、パクリタキセルとカルボプラチンで治療したCIPNと関連があるという報告もある。電位依存性カリウムチャネルの変異とCIPNとの関連は確認されていない。神経系の発生や機能、細胞修復経路に関わる遺伝子も、CIPNと関連していることが予想されるが、これらについての関連ははっきりしていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響で、主研究者の家族の通う保育園が8回ほど休園になった。 毎回突然かつ長期間にわたる休園で、研究に対する見通しが全く立たなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
化学療法剤は、疼痛、認知機能障害、感情の変化などの様々な神経毒性を引き起こす。ストレス増加を通じて単独または複合して発現する可能性がある。 化学療法剤ごとに、様々な遺伝子変化についての研究が進められているが、使用した薬剤やそのメカニズムに関係なく、多くの患者で、時には長期におよび、同様の末梢および中枢神経系の障害が見られる。重要なことは、どのような化学療法剤が使用され、どのような生物学的メカニズムが引き金となったとしても、ほとんどの患者では、感覚障害や認知障害の発現につながる可能性があるということである。 神経毒性は、脳の異常なリモデリングを伴う神経細胞の直接損傷、神経ネットワーク動態の障害、神経新生およびグリア形成の低下、グリア細胞の過活性化、BBBの変化、神経炎症および神経内分泌変化、酸化化学療法による末梢神経障害とケモブレイン(化学療法により、重篤な中枢神経系の副作用が発現する可能性があること)の根本的なメカニズムを認識し、それを克服する方法を見つける必要があると考える。重要なことは、これらの変化は、様々な化学療法剤による治療後に、その作用機序とは無関係に現れる。このため、痛みが長期化し、これらの影響が長期化している患者についての脳機能変化をとらえることを新たな目標とする。認知機能の変化は、主観的で測定が難しいため、患者や臨床医に発見されなかったり過小評価されたりすることが多いと報告されている。複数の詳細な質問紙による痛みの評価と、治療効果による変遷と脳機能画像的な変化を健常人と比較することで、これらの変化をとらえることを目標とし、現在健常人も含めたリクルートを開始し、画像評価をすすめている。SVZ、海馬の歯状回およびCNSの脳梁における変化に関与する可能性があると仮説を立て、解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で、主研究者の家族が通う保育園が複数回突然、長期間休園となり、研究計画の見通しが立たない状況となった。
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