2020 Fiscal Year Research-status Report
イソフルラン麻酔メカニズムにおけるアストロサイトCRACチャネルの重要性
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18K16490
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
堀 耕太郎 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60735827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 麻酔 / カルシウム / 抑制性神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初使用を予定していたアストロサイト特異的CRACノックアウト(KO)マウス(GFAP Cre, Orai1 fl/fl)はGCaMP6を用いて脳スライス標本を作製しGFAP Creの発現を観察すると、海馬CA1錐体細胞の大部分に発現している事が判明したためアストロサイト特異的に検討をする事が難しいと判断した。我々は他の研究で海馬CA1アストロサイトのgliotransmitterが抑制性神経細胞の興奮性を増強し神経伝達を制御している事を発見したため、予備的な実験結果が抑制性神経細胞を介したものである可能性が考えられた。そこで抑制性神経細胞のOrai1を特異的にKOしたマウス(Gad2 Cre, Orai1 fl/fl)を用いてイソフルラン麻酔からの覚醒時間をWT (Wild type)マウス(Cre-, Orai1 fl/fl)と比較すると、KOマウスで有意に覚醒が早い結果となった。またこの結果はより短時間作用性吸入麻酔薬であるセボフルランでも同様の結果となった。覚醒時間は麻酔深度だけでなく呼吸回数に依存するためそれも同時に比較したが、KOマウスとWTマウスで有意な差を認めなかったため、抑制性神経細胞のCRACチャネルが吸入麻酔薬の作用メカニズムに関わっている可能性が示唆された。麻酔覚醒時間は当初検討を予定していた海馬よりもより意識レベルに関わる部位での抑制性神経細胞が関与している可能性が考えられる。まずは脳皮質での記録を試みたが、現状パッチクランプに用いている顕微鏡は型式が古く蛍光色素の観察ができないため、抑制性神経細胞の同定が困難と判断した。脳皮質に加えて麻酔の意識レベルに重要とされる視床網様体ではほとんどの神経細胞が抑制性であり、またそれは発火特性から推測できるため、現在は視床網様体の抑制性神経細胞で麻酔メカニズムへの関わりを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス流行のため2020年度は当研究室も一時閉鎖となり、またコロナ診療支援等により通常臨床業務の変更が必要となったため、当初の計画から遅れを生じた。この影響により今年度は研究費の延長申請を行い受理されている。実験結果も概要に述べたように当初使用を予定していたノックアウトマウスのCreが神経細胞にも発現している事が分かり計画変更を余儀なくされている。電気生理で用いているビデオカメラも経年劣化により使用不可となり速やかに購入予定であるが、コロナウイルス流行のためメーカーの機器選定にも通常よりも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験で非常に興味深い結果が出ているため、現在そのメカニズム検討を行っている段階である。脳スライスのパッチクランプ記録は現在の設定で既に記録できることは脳皮質神経細胞で確認済のため、視床網様体神経細胞での記録により行動実験で得られた結果のメカニズム解明に寄与できる可能性が考えられる。メカニズムへの寄与が検討できた後に速やかに英文学術雑誌にその結果を投稿する計画としている。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス流行のため、一時研究室が閉鎖になったため。
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