2019 Fiscal Year Research-status Report
脳内麻酔作用部位の同定と遺伝子変化の網羅解析-術後脳機能障害の機序解明に向けて-
Project/Area Number |
18K16499
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
森 啓介 日本医科大学, 医学部, 助教 (60809375)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全身麻酔薬 / セボフルラン / プロポフォール / 網羅的遺伝子発現解析 / 全身麻酔薬の作用機序 / 脳神経活性化部位 |
Outline of Annual Research Achievements |
最も使用されている全身麻酔薬として吸入麻酔薬セボフルラン、静脈麻酔薬プロポフォールがある。本研究では、全身麻酔薬(セボフルラン・プロポフォール)が惹起する神経活性化部位の同定、及びその部位での遺伝子発現変化を詳細かつ網羅的に解析し全身麻酔の作用機序及び副作用機序の解明を目的として行っている。 解析手順としては、①麻酔負荷により活性化される脳部位の同定を神経活動マーカーc-Fosの発現により同定、②レーザーマイクロダイセクション(LMD:laser microdissection)によりそれらの部位を麻酔負荷群、対照群より採取、③麻酔により活性化された部位における遺伝子発現変化を発現アレイにより網羅解析で行っている。 2019年度は下記まで終了した。①では神経活性マーカーであるc-FosのmRNA、及びタンパク質の発現をIn situ hybridizationと免疫染色を用いて可視化・解析した。麻酔によりc-Fos発現に差を認める脳部位としてカジェハ島、扁桃体、手綱核、視索上核、前庭神経核、孤束核、下オリーブ核、脚間核で確認された。②では麻酔負荷群及び対照群のラットからLMDを用いてc-Fos発現に差を認めた上記脳領域を採取した。一度にできる発現アレイ解析の数的制限、麻酔の作用機序または副作用への関連性を考慮し上記脳領域から4領域(外側手綱核、内側手綱核、前庭神経核、孤束核)に選定した。これらの神経核は小さいため発現アレイ解析に十分な量のRNAを採取するために複5匹の動物から試料をプールした。③LMDで採取した試料からRNA抽出を行い、発現アレイ解析に必要十分のRNAを採取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①全身麻酔薬として、一般的に使用されているものは吸入麻酔薬・静脈麻酔薬がある。当初は、最も使用されている吸入麻酔薬セボフルランについてのみ解析を進める予定であった。しかしながら全身麻酔薬の作用、副作用機序の解明を想定した場合、吸入麻酔薬のみならず静脈麻酔薬の解析も行い比較検討した方がより広く深い知見が得られると判断したため、静脈麻酔薬として最も使用されているプロポフォールについても解析を行っている。 ②麻酔負荷に反応ありと選定した4ヶ所の神経核(外側手綱核、内側手綱核、前庭神経核、孤束核)は、非常に小さいため発現アレイ解析に十分な量のRNAを採取するために複5匹の動物から試料をプールした。そのため当初の予定よりも、検体数が増え、実験手技の量も増えている。 上記①と②の理由から、当初の予定よりはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】で示したように、選定した4領域の神経核のRNA採取までは終了している。2020年度前半は、これらを網羅的遺伝子発現解析する予定である。網羅解析では遺伝子発現アレイ解析の外部委託を予定している。2020年度中盤に発現アレイ解析の結果を確かめるために変化量が大きかった遺伝子をピックアップし、RT-PCRによる発現確認を行う。2020年度内に麻酔科学研究の基盤となる情報は得ることができると策定している。同時に論文作成も進めている。
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Causes of Carryover |
当初より脳領域の網羅的遺伝子発現解析は外部委託を予定しており、この外部委託に大きな予算を想定していた。しかしながら脳領域の選定・試料採取に遅れが生じたため、網羅的遺伝子発現解析の外部委託が遅れてしまい、結果として次年度使用額が生じてしまった。今年度前半には試料採取が終了する予定であるため、今年度前半に網羅的遺伝子発現解析の外部委託を行う予定である。
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