2018 Fiscal Year Research-status Report
慢性疼痛に対する新たな鎮痛法開発を目指したTRPV3チャネル抑制機構の解明
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18K16502
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
堀下 玲子 産業医科大学, 医学部, 助教 (40746658)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / TRPV3チャネル / 局所麻酔薬 / TRPV3抑制機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性疼痛や神経障害性疼痛を成因とする慢性疼痛は、その複雑な病態のため現存する鎮痛薬では治療困難な例が多く、新たな鎮痛薬・鎮痛法の開発が強く望まれている。温度感受性受容体であるTRPチャネルは温度や化学的・機械的刺激を受容する分子であるが、いくつかのサブタイプが慢性疼痛の発生と進展に重要な役割を持つことが明らかになってきた。TRPV3チャネルもそのサブタイプの一つであり、特に炎症性疼痛の発生・進展に深く関与することが示されているが、TRPV3チャネルの調節機構については不明な点が多く、これをターゲットにした有効な鎮痛薬開発には至っていない。そこで、慢性疼痛に対する新たな鎮痛薬・鎮痛法開発に貢献するために、TRPV3チャネル抑制機構を分子レベルで解明することを目的として、研究計画を立てた。①TRPV3とTRPV1チャネルのcRNAによるキメラ型cRNAの作成、②電気生理学的手法(アフリカツメガエル卵母細胞発現系)を用いたキメラ型TRPチャネルに対する局所麻酔薬の影響解析と作用部位の同定、③慢性疼痛モデルマウスに対する電荷型局所麻酔薬の局所投与(塗布)による鎮痛効果の解析、④遺伝子変異マウスに対する電荷型局所麻酔薬の局所投与(塗布)による鎮痛効果の解析、である。 申請者はこれまでに、電気生理学的手法を用いて、局所麻酔薬(リドカインなど)及び細胞膜を通過しない電荷型局所麻酔薬QX-314がTRPV3機能を抑制することを発見してきた。その作用機序を解明するため、同手法を用いた様々な解析を行った。その結果、局所麻酔薬が非拮抗阻害的にTRPV3機能を抑制すること、その効果は使用依存性であること、QX-314は細胞内からはTRPV3機能に影響を与えないこと、フォスフォリパーゼCを介したTRPV3抑制効果は、局所麻酔薬の抑制機序に関与しないことなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた電気生理学的手法によって、局所麻酔薬及び電荷型局所麻酔薬によるTRPV3機能の抑制機序を解析した。その結果から、局所麻酔薬は電荷型として細胞外からTRPV3のイオン透過孔に作用することによってTRPV3機能を抑制すること、非電荷型局所麻酔薬は作用しないことなどが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、局所麻酔薬のTRPV3に対する新たな抑制機序が発見された。これらの結果を踏まえ、今後、さらに局所麻酔薬のTRPV3に対する作用機序・作用部位を解明するため、キメラ型TRPチャネルの作成や、これに対する局所麻酔薬の影響を解析していくなど、さらなるTRPV3活性化調節機構の解明について検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 計画的に執行を進めた結果、未使用額が7,481円生じたが、予定していた試薬購入に必要な金額に満たなかったため。 (使用計画) 次年度の研究費と合わせて、試薬と消耗品の購入に使用する予定。
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