2018 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ誘発ARDSの新規制御機序確立に向けたC型レクチン受容体の機能解析
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18K16510
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 秀輝 新潟大学, 研究推進機構, 特任助教 (90799082)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフルエンザ / C型レクチン受容体 / 急性呼吸促迫症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、微生物多糖を認識するパターン認識受容体であるC型レクチン受容体(CLRs)が、インフルエンザにより誘発される急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症病態にどう関与しているのかを解明することを目的としている。このCLRsのうち、本研究では高マンノース多糖を認識するDectin-2およびMincleに着目して、インフルエンザウイルス(IFV)とCLRsの相互作用について解析を行った。 (1)第1に、Dectin-2またはMincleにリガンドが結合しシグナルが伝達されると、転写因子NFATが緑色蛍光タンパク(GFP)を発現させるレポーター細胞を、IFV膜表面主要抗原であるヘマグルチニン(HA)で刺激した。A型株であるH1N1株およびH3N2株由来HA刺激により、Mincle発現細胞でGFP発現がみられた。また、B型株であるビクトリア系統株および山形系統株由来HA刺激でも、A型株と同様のGFP発現が観察された。一方でDectin-2は、H3N2株由来HA刺激でGFP発現が観察されたが、その他の株由来HA刺激では、わずかなGFP発現に留まった。 (2)第2に、骨髄由来樹状細胞をIFV由来HAで24時間刺激することで産生される炎症性サイトカイン量をELISAにて測定し、炎症誘導への関与を評価した。B型株由来HA刺激によるサイトカイン産生は、A型株と比較して優位であった。さらに、両株のHA刺激により産生されるIL-12p40およびIL-6産生は、野生型マウスと比較してDectin-2遺伝子欠損(KO)マウスにおいて有意に低下した。一方で、Mincle KOマウスにおけるIL-12p40およびIL-6産生は、野生型マウスと同等であった。 以上の結果から、IFVの認識および炎症反応誘導において、Dectin-2が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Dectin-2 KOマウスおよびMincle KOマウスの繁殖が遅れたため、平成30年度に計画していたインフルエンザ経鼻感染によるARDSモデルでの解析が未実施である。代替として、平成31年度に計画していたGFPレポーターアッセイによるシグナル伝達の解析、および骨髄由来樹状細胞を用いた炎症性サイトカイン産生能の評価を前倒しで実施し、インフルエンザにおける炎症反応誘導にDectin-2およびMincleが関与するかを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析から、Dectin-2がIFVの認識および炎症反応誘導に関与しており、Dectin-2がARDS制御に重要な役割を果たす可能性が示唆された。そこで、次年度以降はインフルエンザ誘発ARDSマウスモデルを用いて、その詳細な機序について解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
マウス繁殖の遅れにより、本年度に予定していた実験を次年度に持ち越すため、未使用額が生じた。したがって、未使用分の助成金は、本年度に行うことができなかったインフルエンザ経鼻感染モデルによるARDS発症への関与の解析を実施するために使用する。
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