2018 Fiscal Year Research-status Report
緑膿菌感染症の自然免疫における抗体価の経時的解析と最適な獲得免疫の判定基準の検討
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18K16521
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
木下 真央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20816384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗体価推移 / V抗原 / Ⅲ型分泌毒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤耐性緑膿菌(MDRP)といった薬剤耐性グラム陰性桿菌による医療関連感染症が広がり、抗生剤に頼らない治療が社会的に求められている。我々はこれまでに、緑膿菌感染症に対する受動免疫効果や能動免疫療法について取り組んできた。本研究では、緑膿菌に感染した時の生体の防御免疫機構について着目し、自然免疫における抗緑膿菌抗体価の経時的解析を行い、抗体価や生存に影響を与える因子を検討する。さらに多剤耐性緑膿菌株や免疫抑制状態の動物モデルを用いて獲得免疫のメカニズムの解明にむけた基礎研究を行ない、今後の臨床応用へと発展させたい。 1.遺伝子組み換え緑膿菌V抗原・Ⅲ型分泌毒素タンパクの作成 緑膿菌V抗原(PcrV)・Ⅲ型分泌毒素遺伝子(ExoU)をPCR法にて増幅し、大腸菌遺伝子組み換え発現ベクターに組み込み、大腸菌M15株に導入した。V抗原・Ⅲ型分泌毒素タンパク保有大腸菌M15株をLB培地で培養し、発現誘導を行った。遠心分離後に得られた菌体を破砕し、吸着させ、緑膿菌V抗原・Ⅲ型分泌毒素タンパクを抽出した。この抽出液を、その後エンドトキシン吸着カラムを使用し、得られたV抗原・Ⅲ型分泌毒素タンパクを電気泳動(SDS-PAGE)にて分子量を確認した。 2.緑膿菌性肺炎モデルによるPcrV・ExoU抗体価の経時的解析 マウスに対して吸入麻酔薬を用いて全身麻酔下で亜致死量の緑膿菌PA103株を気管内に投与した。緑膿菌投与後10日ごとに尾静脈より10μl採血を施行し、間接的ELISA法にて血清抗PcrV・ExoU抗体価を測定した。プレートをコーティングする抗原には遺伝子組換えPcrV(rePcrV)ExoU(reExoU)、一次抗体には採取した血液の希釈液、二次抗体にはAnti-Mouse IgG・IgMを用いて、プレートリーダにて450nmの吸光度を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の大枠としては以下を計画していた。 1.遺伝子組み換え緑膿菌V抗原・Ⅲ型分泌毒素タンパクの作成 2.緑膿菌性肺炎モデルによるPcrV抗体価の経時的解析 上記プロジェクトに関して概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、免疫抑制動物モデルおよび多剤耐性緑膿菌を用いたPcrV・ExoU抗体価の経時的解析と最適な獲得免疫の判定基準の検討 1. 宿主側としてシクロホスファミド2.5mg/mouse×2回皮下注射で免疫抑制したマウスを、細菌側として京都府立医科大学で各種臨床材料から分離された抗菌剤耐性緑膿菌の中から複数種の抗菌剤耐性を示す株を用いて上記と同様の実験を行う。 また免疫ブロット法による抗体価に関連する新たな抗原の探索 2. 亜致死量の緑膿菌感染で生存したマウス・免疫抑制マウス・多剤耐性緑膿菌で生存したマウスから採血した血液と緑膿菌表面抗原を用いて免疫ブロットを行う。緑膿菌PA103株・多剤耐性緑膿菌株をTSB培地を用いて培養する。その後遠心し、沈殿物をsucrose含有バッファーによって溶解する。再度遠心し、上清を破棄したのち、ペレットをsucrose非含有バッファーにより溶解し、遠心後上清を回収する。表面抗原の抽出液をSDS-PAGEに注入する。その後ゲルを取り出しメンブレンに転写する。次に一次抗体として生存したマウスの血液を、二次抗体(Anti-Mouse IgG-Peroxidase antibody produced in rabbit)の反応後、最後にDAB(3,3’-diaminobenzidine)で発色し反応を確認する。 3. 既存の新たな抗原(OPRF、EndotoxinA)に対する抗体価の推移をみる。 これらの過程を通して獲得免疫のメカニズムの解明にむけた基礎研究を行ない、今後の臨床応用へと発展させたい。
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Causes of Carryover |
実験の際のヒューマンエラーが少なかった。新たな抗原タンパクの作成や実験器具を購入するために上記費用が発生した。
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