2018 Fiscal Year Research-status Report
非固定対象への確実な薬液投与を狙った無針注射器の開発
Project/Area Number |
18K16526
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
工藤 慈 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (60756584)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 針なし注射器 / ウェットショット / 防振 |
Outline of Annual Research Achievements |
利便性が高く確実に薬剤を投与可能な無針注射器を開発することを研究課題としている.具体的には『①注射器を垂直に当てていない状態でも薬液を皮内に送達することが可能なシリンジ構造検討』『②注射器垂直方向に揺れ動く相手に対して,シリンジ先端を適正圧力で押し付けた状態で保持可能な注射器の構造検討』を行っている.これらを基にして無針注射器を製作し,非固定物を対象としたケースでも薬剤搬送が可能な無針注射器の設計指針を得ることを目的としている. 平成30年度には,(1)投与確実性評価のための皮膚モデルの検討(2)非垂直注射時のウェットショット防止用シリンジ構造の設計・製作を行った.(1)では,本研究代表者がこれまでの研究の中で投与対象としてきたゼラチン,生体材料,産業用ワイパーによる評価を参考にして,より人間の皮膚に近いモデルの製作を目標としている.そのための材料選定および製作方法についての調査,検討を行った.その結果,多孔質構造であるスポンジとゼラチンを組み合わせて複合構造とすることで,皮内での拡散に近い状態を再現することが可能であることが明らかになった.(2)では,シリンジが皮膚に非垂直の状態で接触している場合に生じるウェットショットを防止するために,シリンジの薬液流路が常にシリンジに垂直に接するような構造を検討し,試作評価を行った.その結果,吸引式針無し注射安定装置を用いて皮膚を吸いながら注射することで,手振れのような多少の震度が生じても皮膚とシリンジ先端を常に接触させたまま注射することを可能にした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェットショットは非垂直時の注射による皮膚と発射口のすき間の発生と,注射時の縦軸振動による注射点のずれが原因だと確認した.これを防止するために,吸引式針無し注射安定装置により注射位置の周辺の皮膚を面で支えることで注射器の安定性を向上させた.ただし今後改善が必要な事項も発生している.例えば,シリンジ先端が吸盤部で覆われ注射位置が目視できないため吸盤部には透明な素材を使い注射位置が目視できるようにすることである.また,皮膚と吸引機構との設置面に柔らかい素材を用いることで,皮膚とのすき間を無くし吸引時の空気漏れをなくすのと複雑な形状にも対応できるようにする必要がある. 皮膚モデルの作製についても,構造を改良することで拡散状態を近づけることは出来たが,表面の強度をさらに上げて,皮膚バリアを再現することが必要であることがわかった. ただしこれらは,研究継続期間内に解決可能であると推測できるため,一年目については,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2019年度には,(1)皮膚モデルの製作と評価(2)注射器垂直方向の振動吸収機構の設計・製作を行う.(1)では,前年度の調査・検討を基に適切であると判断した材料を用いて,注射対象となる皮膚モデルの製作を行う.薬液投与量が設定どおりに搬送されているかを,噴射前後の重量測定により比較し,薬液の拡散形状を観察する予定である.それらの結果から噴射特性を十分に反映できる皮膚モデルかを評価する.(2)では,注射器のグリップ部分に対して軸方向の振動吸収構造を追加するための構造検討を行う.まず,どの程度の周波数域に対して性能を満たせばよいかを調査し,それを満たすように構造設計および試作評価を行う.一次試作機はABS樹脂で製作し改良設計,改良試作を行う.動作確認が出来たらステンレス鋼を用いて,実験機を製作する. 3年目となる令和2年度には,皮膚モデルを用いた加振時での注射確実性評価を行う.前年度までの研究成果を基に,皮膚モデルと実験機による無針注射の確実性を評価するための実験を行う.皮膚モデルを加振機に載せて振動させ,それに対して注射を行う.投与量設定値通りの薬液投与量が注射できているかを測定し,ウェットショット防止構造,振動吸収構造が正常に機能しているかを確認する.また,加振条件下での無針注射における薬液の皮内拡散を観察し,通常の注射との比較を行う.
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