2018 Fiscal Year Research-status Report
集中治療室退室後の予後改善のための不動化による筋萎縮のメカニズムと治療薬の解明
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18K16531
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長島 道生 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00422056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮 / ICU-acquired weakness / 筋弛緩薬 / アセチルコリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症患者に生じうる筋力低下や筋萎縮 (ICU-acquired weakness) により、集中治療室や病院入院期間の長期化、自宅退院困難、 死亡率増加、医療費・介護費用の増加が生じる。近年、集中治療室に入室する高齢者は増加し、高齢者は特に筋力低下や筋萎縮が生じやすいとされているため、筋萎縮は医療における重大な問題となりうる。しかし重症疾患に関連する筋萎縮のメカニズムや治療法はほとんど解明されていない。この重症患者に生じる筋力低下と筋委縮の病態の解明のため動物実験による研究を行い、2018年度は研究代表者が第二著者として論文を発表することができた。この論文では、動物実験で下肢を不動化することで筋力低下と下肢筋肉重量の低下を引き起こし、さらに加熱処理し不活性化した細菌を静注し全身炎症のモデルを作成した。この不動化モデルと全身炎症モデルを用いた動物実験で、アルファ7アセチルコリン受容体のアゴニストを用いることで、体重の減少率や筋肉の減少率が改善することを示すことができた。今後は不動化や炎症により筋力低下や筋萎縮が生じるメカニズムの中で、アルファ7アセチルコリン受容体のアゴニストがどのように作用するかの解明を行いたいと考えている。また集中治療室で重症患者に生じうる筋力低下や筋萎縮 (ICU-acquired weakness) の病態解明を目指し、臨床研究を進めるための基盤となるデータを取得したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は研究代表者が第二著者として論文を発表した。この論文では、動物実験で下肢を膝関節から足関節までピンニングを行い不動化することで筋力低下と下肢筋肉重量の低下を引き起こす不動化モデルを作成し、さらに加熱処理し不活性化したCorynebacterium parvumを静注し全身炎症のモデルを作成した。この不動化モデルと全身炎症モデルとそれぞれのプラセボを用いた動物を用いて、アルファ7アセチルコリン受容体のアゴニストを投与は体重の減少率や筋肉の減少率が改善することを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
手術後に気管挿管された状態のまま、ICUで人工呼吸管理をされる場合は手術室での筋弛緩薬の拮抗は行われていない。一方、ICUでは手術麻酔中よりも鎮静薬は減量されていることが多く、筋弛緩薬の効果が残存しているにも関わらず、鎮静薬減量により患者は覚醒するリスクが有る。そこで、ICU入室後に筋弛緩モニターと鎮静モニターを装着し、鎮静深度と筋弛緩薬残存の程度を測定し、ICUでの筋弛緩薬残存の存在を明らかにし、臨床研究を進めるための基盤となるデータを取得したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初研究のためにパソコンを購入予定であったが、暫定的に個人所有のパソコンを使用し研究を遂行したため前年度は購入しなかった。次年度は研究のためのパソコンを購入する予定である。
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