2019 Fiscal Year Research-status Report
革新的受容体合成技術を利用した新規核酸医薬品(アナフィラキシー予防薬)の開発
Project/Area Number |
18K16541
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 康之 愛媛大学, 医学部, 研究員 (10745144)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アナフィラキシー / 周術期管理 / 周術期合併症 / アレルギー / Mas関連G蛋白質共役型受容体X2 |
Outline of Annual Research Achievements |
周術期の薬剤によるアレルギー反応は、時に致命的となり得るため、予防方法の確立が望まれる。従来より、IgE抗体を介するアレルギー反応が周術期のアナフィラキシーの原因と考えられていたが、抗生物質や筋弛緩薬により直接Mas関連G蛋白質共役型受容体 X2受容体(MRGPRX2)が刺激されヒスタミンを遊離するという報告が、新たな原因の一つと考えられるようになった。 しかしMRGPRX2に対する特異的な拮抗薬は存在しないため、拮抗薬を開発することで、薬剤によるアレルギー反応を予防することが可能になると考えた。また、開発する新規拮抗薬の候補として、抗体医薬品の代替として注目される、核酸医薬品であるDNAアプタマーを選択した。DNAアプタマーの選別に当たっては、無細胞蛋白質合成系用いて、人工脂質二重膜上にMRGPRX2を合成したものを鋳型としてSELEX法を行った。 MRGPRX2を発現させたラット好塩基球様細胞(MRGPRX2-RBL-2H3)を用いてスクリーニングを行い、最もMRGPRX2に結合するアプタマーを一つ選び出した。 選出したアプタマーを用いることで、MRGPRX2-RBL-2H3細胞からのヒスタミン遊離を阻害することも確認した。また、同細胞をラットの皮下に移植したアナフィラキシーモデルラットに投与しても、アナフィラキシーの発生を予防出てきている。
並行して、MRGPRX2を刺激すると考えられているロクロニウム(筋弛緩薬)に対してアナフィラキシー症状を呈した患者の検討もした。skin testでロクロニウムに反応し、またロクロニウムに対するIgE抗体を有していないことを確認した。またMRGPRX2遺伝子の全長解析を行い、3つのアミノ酸変異を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無細胞蛋白質合成系で人工脂質二重膜上に合成したMRGPRX2を鋳型として、SELEX法を行うことで新規アプタマーのより簡便に行うことが出来た。頻用されるCell-SELEX法は、培養細胞に発現させた目的蛋白質を鋳型として用いるために、細胞膜表面の様々な蛋白質に対して、非特異的にアプタマーが結合しやすいためnegative SELEXのステップでアプタマーを失いやすいデメリットがあった。また、目的蛋白質のみを精製して鋳型として用いる方法の場合も、ゲルなどの固定相に目的蛋白を固定し、SELEX法を行う必要があり、作業が繁雑であった。しかし、人工脂質二重膜上に合成したMRGPRX2は単純な遠心分離で単利が可能であり、SELEX法のステップを簡便になった。 得られた新規アプタマーは、MRGPRX2-RBL-2H3に特異的に結合し、また、ヒスタミン遊離経路を阻害することを確認している。また、同細胞をラットの皮下に移植したアナフィラキシーモデルラットでも、アナフィラキシーを抑制する効果を確認している。 上記の研究内容は、Suzuki, Yasuyuki, et al. "A novel MRGPRX2-targeting antagonistic DNA aptamer inhibits histamine release and prevents mast cell-mediated anaphylaxis." European Journal of Pharmacology (2020): 173104. で発表済である。 また、ロクロニウムに対して、IgE非依存性のアナフィラキシー反応を起こした患者のMRGPRX2遺伝子の全長解析を行い、3つのアミノ酸変異を確認した。この内容も、ケースレポートとして報告予定である
|
Strategy for Future Research Activity |
MRGPRX2にアンタゴニストとして特異的に働くアプタマーが得られたが、本研究以外でも、MRGPRX2へのアンタゴニストが見つかりつつある。quercetinが抑制的に働くという報告もあり、本研究で得られたアプタマーと比較し、ヒスタミン遊離をどの程度抑制できるかを検討していく。 また、MRGPRX2はオピオイドによるアレルギー反応にも関わっている可能性がある。ロクロニウムだけではなく、フェンタニルなどの臨床でよく使われる薬剤を投与したとき、アレルギー様症状を来した症例のMRGPRX2遺伝子の全長解析を引き続き継続する予定である。 麻酔関連薬にアレルギー様症状を起こしやすくする変異の発見につながることを期待している。
|