2020 Fiscal Year Research-status Report
革新的受容体合成技術を利用した新規核酸医薬品(アナフィラキシー予防薬)の開発
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18K16541
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 康之 愛媛大学, 医学部, 研究員 (10745144)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 周術期合併症 / MRGPRX2 / アナフィラキシー / ロクロニウム / 筋弛緩薬 / アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
周術期の薬剤によるアレルギー反応は、時に致命的となり得るため、予防方法の確立が望まれる。従来より、IgE抗体を介するアレルギー反応が周術期のアナフィラキシーの原因と考えられていたが、抗生物質や筋弛緩薬により直接Mas関連G蛋白質共役型受容体 X2受容体(MRGPRX2)が刺激されヒスタミンを遊離するという報告が、新たな原因の一つと考えられるようになった。 我々はMRGPRX2に対する特異的な拮抗薬は存在しないため、抗体医薬品の代替として注目される、核酸医薬品であるDNAアプタマーによる拮抗薬開発を行った。開発したアプタマーは、MRGPRX2-RBL-2H3細胞からのヒスタミン遊離を阻害したため、アプタマーの3D構造を予測し、東京大学医科学研究所のHPC shirokane上で、HDOCK(http://hdock.phys.hust.edu.cn/)を用いた、アプタマーとMRGPRX2のドッキングシミュレーションを行った。
並行して、MRGPRX2を刺激すると考えられているロクロニウム(筋弛緩薬)に対してアナフィラキシー症状を呈した患者の検討で、MRGPRX2遺伝子の全長解析を行い、3つのアミノ酸変異を確認し症例報告を行った。(S Yasuyuki, et al. British Journal of Anaesthesia 125.6 (2020): e446-e448.)この報告を元に、変異したMRGPRX2を作成された研究も報告されたため、British Journal of Anaesthesia 誌面上で議論を進めている。
前述の報告を含むアナフィラキシー症例2例と、背景が類似するコントロール2例のPMBCを採取し、total RNAを抽出済みである。シークエンス外注予定であったが、受け入れ体制が混雑していたため、2021年4月以降に外注予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに報告済のMRGPRX2に対する、アプタマーの3D構造を予測し、受容体タンパク質とのドッキングシミュレーションを行うパイプラインを、HPCを用いて確立している。今後、シミュレーション結果を基に、より最適化されたアプタマー開発につなげることができる。なお、我々が開発したアプタマー選別のパイプラインにより、耳鼻科領域の腫瘍病変を特異的に標識するアプタマーの開発に応用できたため、現在特許申請の準備を進めている。 また、ロクロニウムに対して、IgE非依存性のアナフィラキシー反応を起こした患者のMRGPRX2遺伝子の全長解析を行い、3つのアミノ酸変異を確認した。この内容も、ケースレポートとして報告している。(S Yasuyuki, et al. British Journal of Anaesthesia 125.6 (2020): e446-e448.) MRGPRX2以外の、因子に関して検討するために、アナフィラキシー既往症例2例と、背景が類似するコントロール2症例のPBMCからtotal RNAを採取しているが、シークエンス外注先の都合により、2021年4月以降の受け入れとなったため、やや計画より遅れている。 しかし、RAWデータをトリミング、クオリティチェック、マッピング、発現量解析、pathway解析につなげる環境は既に構築済であり、シークエンス終了後は速やかに解析が行える状態になってる。
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Strategy for Future Research Activity |
MRGPRX2にアンタゴニストとして特異的に働くアプタマーが得られたが、比較的塩基長が長いアプタマーであるため、シミュレーションを元に、より短いアプタマーの開発を行うことができれば、生産コストの削減につながる。また、我々のアプタマー選別のパイプラインは、他の蛋白質を認識するアプタマーにも応用されているため、今後、腫瘍病変を標識する薬剤開発などにも発展させることが可能であると考える。 また、我々が報告したロクロニウムアナフィラキシー患者のMRGPRX2遺伝子の変異に関して、詳細に調べた報告では、この変異があった場合に、肥満細胞からの脱顆粒が抑制されるというデータが得られたとのことであり、今後もこの変異がどのような変化を引き起こすのかの検討が必要であると考えている。 さらに、周術期アナフィラキシーはMRGPRX2以外の因子が原因で引き起こされる可能性も非常に高く、total RNA-seqによる遺伝子発現量解析を行うことで、何からの原因を検出することを期待している。
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Causes of Carryover |
周術期に筋弛緩薬であるロクロニウムに対してアナフィラキシー反応を起こした患者の、PBMCを用いたRNA-seqを計画していた。アナフィラキシー2症例と、類似した背景を有するコントロール2症例の検体を入手しているが、シークエンス作業を外注する会社が混雑していることから、4月以降の受け入れとなると回答してきたため、次年度にシークエンス費用を持ち越す必要があった。 シークエンス後、RAWデータを入手した後に、トリミング・クオリティチェック・マッピング・発現量解析などを行う環境は既に整えており、今年度の早い時期に解析結果を報告することが可能であると考えている。
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