2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the cerebral ischemic tolerance by inducing UCP4 expression, and challenging of the novel therapeutic approach for cerebral infarct
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18K16555
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
福司 康子 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任研究員 (50722683)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア脱共役蛋白質 / 脳虚血 / 神経保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
UCP4(uncoupling protein 4)はミトコンドリア内膜にある脱共役蛋白で、脳特異的に発現しており、神経細胞を酸化ストレスから守る可能性が示唆されているものの、その役割や機能は解明されていない。これまでの研究で、ラット中大脳動脈閉塞後に小脳室頂核(FN)電気刺激を行うと脳梗塞が縮小することが報告されており、さらに当研究室では、FN電気刺激によって大脳に広範囲な虚血耐性を獲得することを発見し、UCP4がFN電気刺激による虚血耐性獲得に重要な役割を持つ可能性を導き出した。 我々はFN電気刺激によるUCP4の発現がコリナジックな経路を介して行われるという仮説を立て、今年度は、カルバコール刺激によってUCP4の発現が誘導されるかどうか検証した。UCP4の発現を評価する方法については、UCP4-tdTomato(UCP4 promote 赤色蛍光タンパク質tdTomatoレポーターベクター)を構築し、UCP4が発現するとtdTomatoの赤色蛍光が観察できることから、蛍光顕微鏡での観察を行った。 まず、初代培養大脳皮質神経細胞(生後1日齢のラットから取り出した)を用いて、UCP4-tdTomatoをトランスフェクション後、カルバコール刺激を行ったところ、UCP4の発現がコントロールに比べて1.4倍増加し、さらにアトロピンによってその発現が抑制されることを確かめた。SHRラット(12週齢オス)を用いた実験においては、脳室カニュラを設置し、UCP4-tdTomatoをリポフェクション法にて脳室内に投与後、インフュージョンポンプを用いて脳室内にカルバコール投与を行ったところ、大脳皮質広範にUCP4が発現し、その発現量はコントロール群に比べて優位に増加していた。 以上の結果より、コリナジックな経路で(アセチルコリン受容体を介して)UCP4の発現が誘導されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初代培養大脳皮質神経細胞にUCP4-tdTomatoのトランスフェクションを行い、発現の様子を長時間観察する方法を確立した。さらにラット脳へのトランスフェクション法およびカルバコールの脳室内投与方法を確立した。これらの手法を用いることで、当初の目的であった、アセチルコリン受容体を介してUCP4の発現が誘導されることを明らかにできたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、UCP4の発現が誘導されることで虚血耐性を獲得するかどうかを明らかにするための実験を行う。神経細胞に低酸素・低グルコース負荷をかけることで疑似的な虚血モデルを再現することを検討している。まず酸素濃度を制御できるCO2インキュベーターシステムを構築し、酸素濃度0.1-21%における細胞死亡率を求め低酸素・低グルコース負荷条件の最適化を行う。次に低酸素・低グルコース負荷を行い、カルバコール刺激あり・なしでのUCP4発現量と細胞の死亡率等を評価する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、試薬・器具類を購入する費用として計上していたが、研究室の在庫品を使用できたことから、相当額を執行しなかった。次年度は成果発表または論文発表を行う予定であり、そのための費用として計上したい。
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