2018 Fiscal Year Research-status Report
Regeneration of cerebral cortex using pluripotent stem cell-derived cerebral organoids.
Project/Area Number |
18K16558
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬塲 庸平 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20577465)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大脳オルガノイド / iPS細胞 / 再生 / 大脳皮質 / 神経遊走 / 神経上皮 / 細胞シート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は我々の研究分野においては世界的にも変革の年であり、大脳オルガノイド 技術の再生への応用の先駆けとなる研究が数多く報告された。そのため、世界の最新の研究成果を踏まえた上で我々の目指す目標を達成するための方法論の検討を改めて行なった。ソーク研究所のFred Gageのグループは、大脳オルガノイド をマウスのretrosplenial cortexに移植する実験を行い、in vivoの脳内でオルガノイド を成長させる試みを初めて報告した。移植片は試験官内での系と異なり細胞死が抑えられ、血管新生が進み、移植されたオルガノイド 内ではventricular zoneとcortical plateの層構造は保たれ、神経は機能的にホストの神経細胞とシナプスを形成することも示された。しかしながら、我々の最終的な目標である「大脳皮質の層構造の構築・統合」は示されていない。すなわち、この報告によりオルガノイド そのものを脳内に移植する方法では大脳皮質の層構造の再生には至れないことが明確となった。そのため、自己組織化能を有した状態かつbasal-apicalの極性を保った神経上皮細胞シートの作成が必要と判断され、シート化へ向けた最初のアプローチとしてオルガノイド 内の神経上皮組織の大型化に関わる条件の検討を進めている。初期の実験において、WNTシグナルの抑制は、FOXG1遺伝子発現を指標とした前脳化を促す、神経上皮組織の拡大には負の方向に働くことが示唆された。領域パターン化と神経上皮の拡大を領域を両立する至適条件の決定を進めている。またiPS細胞の培養系やオルガノイド 誘導法、神経幹細胞の分化誘導法を安定させるため、技術的な改善も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、神経上皮組織シートの作成・検討までを目標としていたが、学内での遺伝子組換え実験の手続きなどに時間を要したことや、所属研究室の改装などがあり物資が搬入できなかったこともあり、実験計画が遅れている。また、iPS細胞を十分なスケールで安定的に未分化状態で培養・保存する体制の整備およびオルガノイド や神経幹細胞にへの分化誘導する体制の整備をおこなっているが、ロット差の少ない、品質の安定した試薬の選定に難渋し、初期の実験系の立ち上げに時間を要している。現在、ややコストは上がるものの、培養試薬などで可能なものは大手ベンダー販売されるロット差の少ないものを選定し、培養系がより早期に安定するように準備を進めている。iPS細胞は未分化での品質が以後の実験系の安定性に関わるため、準備を入念に行なっている。Reprocel社のPrimate ES cell mediumを使用して、SL-10、MEFを用いたオンフィーダーの培養系で拡大培養を行い、状態の良い質の安定したiPS細胞ストックを作成したのち、オルガノイド への分化誘導を行う方針としている。我々の事前検討では選定したiPS標準株の分化能は安定していると確認されているが、本実験用に確保するストックにおいても分化指向性の検討が必要であり、ストックiPS細胞の未分化マーカーの発現の確認、未分化状態の安定性の確認、in vitroでの分化能の評価、とくに神経系への分化指向性・領域指向性などの確認にもう少し時間を要する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画はやや遅れているが、iPS細胞の安定したストックが確保は今後の実験を進める上での重要な基盤となるため、十分に時間をかけ準備を行う必要がある。分化能・分化指向性が安定したストックが作成され次第、大脳オルガノイド の誘導を行う。オルガノイド 誘導自体はiPS細胞の品質が安定すれば3週間程度で終えることができ、かつ安定しているためそれほど条件検討に時間を要しないと予想している。品質評価は免疫染色法による神経上皮細胞マーカーであるPAX6やSOX1, SOX2, NESTINの発現確認、定量的RT-PCR法による発現量の定量をおこない、in vitro(2次元培養下)での分化誘導した神経細胞への分化能評価をβ3-tubulin, MAP2, NeuNの免疫染色法により施行する予定である。その後、神経上皮細胞シートを作成するための検討に入るが、大脳オルガノイド由来神経上皮細胞は、パパインにより酵素的に分離、ラットより分離した嗅粘膜上に播種する実験を進める予定であるが、本年度の前半に必要な動物実験などの手続きを他実験と並行して行う予定である。 大脳オルガノイド 由来神経上皮細胞シートの作成及び試験官内での組織学的な評価は今年度中に行い、実験の遅れを取り戻せる見込みである。また、今年度後半から次年度に行う予定である脳内への移植実験に持ち込めるように、ラットモデルの準備を共同研究者と共に進めていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れにより大量に必要となるiPS細胞の培養試薬や成長因子といった高額試薬の導入、分化誘導用の低分子化合物、培養ディスポーザブル製品の購入が次年度以降に持ち越す形となった。iPS培養培地, bFGFなどの成長因子、分化誘導用の特殊表面加工された培養フラスコやV-bottomの96 wellプレート、iPSストック作成・神経分化誘導の際に多く必要となる培養用のディスポーザブル製品の導入を次年度に予定している。さらに、ストックの品質評価のための定量的PCR試薬、トータルRNA分離・cDNA作成試薬、各種マーカの免疫染色用抗体・染色試薬の導入も合わせて次年度に導入となる予定である。
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