2019 Fiscal Year Research-status Report
Regeneration of cerebral cortex using pluripotent stem cell-derived cerebral organoids.
Project/Area Number |
18K16558
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬塲 庸平 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20577465)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大脳オルガノイド / 大脳皮質 / 再生医療 / iPS細胞 / 神経上皮 / 中枢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度理化学研究所バイオリソースセンターよりiPS細胞標準株である201B7ラインを導入、前年度に選定した方法を使用して、SNLフィーダー上での安定的な培養系を確立した。まず本年度は大脳オルガノイド 由来神経上皮の作成方法を検討した。Lancasterらが発表した原法に、Wntシグナル阻害剤による領域パターニングを加えた大脳選択的なオルガノイド 誘導法を使用して、安定的に大脳オルガノイド を作成することに成功した。これらオルガノイド は、誘導後2週間目あたりより神経上皮の拡大が見られるようになり、apical-basalの極性を有する大脳様構造が誘導された。また大脳オルガノイド を長期培養するために、高湿度対応培養用シェイカー を新たに導入し、よりviabilityの高いオルガノイド の誘導を可能とし、また大型化することに成功した。さらに本課題の目的である大脳皮質再生に直接的に必要となる、大脳オルガノイド 由来神経上皮細胞を大脳皮質に移植するためのデリバリシステムの開発を引き続き進めた。移植の際にハンドリングが容易なウエハ状の形態を保持しつつ、オルガノイド 由来神経上皮・大脳皮質組織を集積できるスキャフォールドを複数種検討し、オルガノイドsheet/waferを試作した。神経上皮との親和性にはスキャフォールド間で差異が認められ、各々でスキャフォールド上への培養移行時期や細胞密度などの検討を行った。オルガノイド 由来神経上皮は非生体分解性スキャフォールドXへの親和性が高いことがわかった。生体分解性スキャフォールドY, Zについてはオルガノイド 由来神経上皮の親和性があまり高くないものの、条件により神経上皮を集積したsheet/waferの作成は可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた iPS細胞の導入、予定の培養系の導入は比較的短期間で進み、大脳オルガノイド の誘導系も安定させることができた。さらに当研究室内でも培養室の調整が進み、震盪培養器も新たに導入され、より大型でmaturityの高いオルガノイド を誘導できるようになった。現在まで、誘導系を含め全てin-houseで実験を進めることができており、実験体制が確立されていたことにより、加速度的に当初の研究計画を進め、前年度の遅れも取り戻すことができつつある。本研究の目的である、大脳皮質再生法の開発の中での中核的な開発段階である、神経上皮組織のシート化プロセスの開発についても既に着手し、予定していた素材以上に、複数のスキャフォールドを使用して、試作を行う段階まで進めることができている。これにより各素材の特性などの理解が深まり、現在プロセスの最適化・詳細条件・評価を進めているところである。移植実験についても情報収集・導入に必要な手続きを進め、シート化プロセスが固まり次第移植に進める様に準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
定量的PCR法で大脳皮質神経特異的マーカーの発現、未分化iPS細胞特異的マーカーの消失などの確認を進め、大脳神経上皮シート作成にとって最適な培養条件を決定を進める。前脳選択的な培養法を採用しているが、大脳オルガノイド 法特有のheterogenityについても考慮せねばならず、大脳皮質ニューロンや神経上皮細胞・前駆細胞の純度などについても組織学的に検討していく方針である。またシート化のプロセスが固まってきた段階で、理化学研究所バイオリソースセンターより新たに複数のiPS標準株(エピソーマルベクター法で誘導されたiPS細胞)を入手しわれわれの手法が、他細胞株でも誘導可能であることを示す予定である。シート化による細胞分化系譜への影響については、これら複数のラインでシートを作成し、RNA seq法でtranscriptomeの評価を実施する方針である。
合わせて、ラットへの移植実験を行う予定としているが、大脳皮質を切除モデル、出血による損傷モデルについても開発を進めていく予定としている。次年度後半にも移植実験に着手できればと考えている。
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Causes of Carryover |
前年度に導入が遅れていた培養装置などについても当該年度に導入し、培養実験なども概ね予定通り進めることができた。iPS細胞の培養維持が予想よりも早く安定したため、当初想定したよりも培地消費が少なった。しかしながら、今後複数の細胞ラインの導入により、培地消費が増えることが予想され、次年度の培地購入費用に使用する予定である。
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