2018 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系原発悪性リンパ腫に対する患者由来脳腫瘍細胞株を用いた新規治療法の探索
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18K16565
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中村 大志 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60771615)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PCNSL / TERT / DNA methylation / テロメア伸長 / テロメラーゼ非依存性テロメア伸長 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系原発悪性リンパ腫(Primary Central Nervous System Lymphoma, 以下PCNSL)について,本研究において腫瘍における標的遺伝子異常およびエピゲノムについてDNAメチル化について遺伝子解析を行った.腫瘍細胞の寿命は,テロメアの反復配列の短縮によって制限されているが,PCNSL腫瘍細胞において,テロメラーゼ依存性・テロメラーゼ非依存性テロメア伸長(ALT)と呼ばれる機構によってテロメア長を維持し,この運命を回避しているとされる.最近,PCNSLにおいてTERT promoter領域のhotspot遺伝子変異について報告した.一方で,体幹部におけるびまん性大細胞B細胞リンパ腫においてその部分におけるhotspot遺伝子変異は特に認めず我々はそれについてまず検証した.続いてTERT promoter領域におけるプローブデザインを含むMethylation arrayデータよりそのDNAメチル化状態を解析し,更にRNAを抽出したPCNSL22検体に対してTERT遺伝子発現解析を行なった.
同一研究室における共同研究者である立石 健祐らによってこれまでにPCNSL/全身性DLBCL頭蓋内転移3症例より実際に細胞株樹立実験が成功し,現在も複数の腫瘍細胞株の樹立実験を進めている.
上記のPCNSLにおけるテロメア伸長に関してテロメラーゼ依存によるテロメア伸長の活性が低い結果よりテロメラーゼ非依存性テロメア伸長(ALT)機構が腫瘍活性に寄与しているか検討すべく複数のPCNSL細胞株においてその経路にあるATRXの免疫染色をおこなった.そこで樹立された細胞株に対する薬剤感受性実験としてATR阻害効果が示されているVE-821を利用した薬剤感受性実験を行うと,なかでも高発現を示す細胞株においてその抗腫瘍効果を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階で概ね本研究は試行錯誤を繰り返しながらも標的遺伝子・経路を定めて研究を進めていると考える。 PCNSL腫瘍検体においてTERT promoter領域hotspot遺伝子変異(c228, c250)を解析したところ遺伝子変異は認めなかった結果であり, Methylation arrayデータを用いてその領域のDNAメチル化状態を解析したところ多くのものがメチル化状態にあった結果が得られた.更に,RNAを抽出したPCNSL22検体に対してTERT遺伝子発現を確認するとTERT遺伝子の発現上昇は認めず,テロメラーゼ依存によるテロメア伸長の活性が低い結果と考えた. その結果に基づいてテロメラーゼ非依存性テロメア伸長が腫瘍増殖における標的となる可能性より樹立されているものを含むPCNSL細胞株においてでのATRX免疫染色を行い,発現を認めた.そこで、薬剤感受性実験としてATR阻害効果が示されているVE-821を利用した薬剤感受性実験を行うと,なかでも高発現を示す細胞株においてその抗腫瘍効果を確認できたので, 本研究は試行錯誤を繰り返しながらも標的遺伝子・経路を定めて研究を進めていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ATR阻害効果の立証: VE-821は選択的ATP拮抗性ATR阻害効果も示す薬剤であり,ATR阻害効果による抗腫瘍効果を検証する.
vivo実験: またin vitro結果に基づきin vivo実験として樹立したPCNSL PDX細胞株をマウス脳に移植し薬剤投与実験をおこない有効性を検証する計画とする.
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Causes of Carryover |
本年度は臨床データ解析を中心とした検討を行ったため、収支バランスがプラスとなった。次年度以降は細胞実験、遺伝子解析が主体となるため、収支バランスはプラスマイナスゼロになると想定している。
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