2019 Fiscal Year Research-status Report
動作特異的局所ジストニアにおけるアリルサルファターゼG遺伝子解析と治療予後の検討
Project/Area Number |
18K16575
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
堀澤 士朗 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10746796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジストニア / アリルサルファターゼG遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
動作特異的局所ジストニア(イップス)は特定動作時に発生するジストニアであり、音楽家やスポーツ選手などの長期間の定型的な繰り返し運動を行っていることが引き金となって生じる。楽器演奏動作やスポーツ動作の遂行時にジストニアが生じることによって、パフォーマンスが著しく阻害されてしまい、音楽家ジストニアの50%以上が、プロとしてのキャリアを断たれてしまっているという現状がある。長期間、定型的な繰り返し運動を行っていることが、動作特異的局所ジストニアを発症させることがサルを用いた動物実験でも明らかとなっており、あらゆる職業動作に伴って動作特異的局所ジストニアが生じることが推察され、相当数の患者数が潜在していることが伺われる。 2014年に、音楽家ジストニアと書痙患者を対象に行った患者・対照関連解析 (Genome Wide Association Study: GWAS) で、アリルサルファターゼG遺伝子 (ARSG) のイントロン上のSNP (rs11655081) に有意な関連があることが示された。しかし、アレル頻度が比較的高いSNPのみを解析対象としている点、アレル頻度のより低いレアバリアントの寄与は考慮されていないという問題もあり、ARSG遺伝子上のほかのエクソン上に機能的なレアバリアントが存在する可能性が考えられる。 次世代シーケンサーを用いて、動作特異性ジストニア患者を対象にARSG遺伝子のターゲットリシーケンスを迅速的且つ網羅的に行うことによって、既知のコモンバリアント以外の機能的バリアントや他の遺伝的要因を探すことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はARSG遺伝子のみに対象を絞りターゲットリシーケンスを行う予定であったが、遺伝性ジストニア様の初期症状を呈する局所性ジストニアが報告されていること、シナプス小胞周辺の経路 (プロセシングや輸送) がジストニアとの関係が示唆されていることを踏まえ、次世代シーケンスの特性を生かし、複数の遺伝子を対象にターゲットリシーケンスを行うことにした検出されたバリアントはサンガー法シーケンスを用いて確認を行い、変異機能解析は、wANNOVARを用いて、従来から代表的な機能予測ツールであるSIFT、polyPhen2、GERPや最新のCADDスコアリングをもとに行った。合計24名の局所ジストニア患者から同意を得てサンプルを取得した。CADDスコアが10以上を示したバリアントが6例検出された。そのうち、ARSG遺伝子に見つかったバリアントは2例あった( 539C>T, p.Ala180Val, 698G>A, p.Arg233His)。このほかには、STON2が2例、DRD1、THAP1が1例検出された。これら24例に対する手術治療はすでに終了しており、現在治療予後、症状などと遺伝子変異との関係を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
24例のサンプルは解析が終了している。これらの治療予後や症状発現の推移などと遺伝子変異との関係を検討し、ARSG遺伝子だけでなく、動作特異的局所ジストニアの発症に関与する遺伝子変異を明らかにする。本年度内に検討は終了し、研究結果をジャーナルに投稿できる見込みである。
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Causes of Carryover |
遺伝子サンプルの収集に予想以上に時間がかかり、解析を行うのに年度を跨いで行う必要が生じたため、次年度にも使用する必要が生じた。主に遺伝子の追加解析に使用する予定である。
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