2018 Fiscal Year Research-status Report
希少悪性脳腫瘍に対する免疫監視機構を標的とした新規治療法開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
18K16596
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西本 真章 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50815082)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | germinoma / solitaly fibrous tumor / hemangiopericytoma / PD-1 / PD-L1 / tumor immunity |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋内孤発線維性腫瘍/血管周皮腫 (SFT/HPC) は全摘出を行っても多くの症例で再発や頭蓋外転移を来す。また胚細胞腫瘍は化学放射線治療での治癒が期待されるものの、再発後の治療法は確立されていない。一方、免疫チェックポイント関連分子に対する抗体が様々な癌種に対する新規治療薬として注目されており、私たちは、頭蓋内SFT/HPC及び頭蓋内胚細胞性腫瘍では全例でPD-L1が発現しており、また臨床経過と腫瘍免疫回避機構とに相関がある可能性を見出している。本研究では、患者より採取した腫瘍検体を用いて、PD-L1遺伝子の構造異常解析、遺伝子発現プロファイル解析による関連分子経路検索などから、これらの2腫瘍型におけるPD-L1の発現メカニズムを解明することを主目的とする。胚細胞性腫瘍に関しては、laser capture microdissectionによる腫瘍細胞のみからのDNA抽出が可能である。 本研究の成果として、SFT/HPCのPD-L1発現と予後とに相関を認めた。この内容に関して論文を投稿、Journal of Neurooncologyにacceptされた。 さらに胚細胞腫瘍の一つである胚腫についても、予後不良群においてPD-L1の発現上昇があり、またPD-1の発現もCD8陽性リンパ球の中の割合を考慮すると上昇していることを見出した。本研究についても論文を作成し、現在投稿中である。 今後は頭蓋内孤発線維性腫瘍/血管周皮腫 (SFT/HPC)に対する免疫チョックポイント阻害薬を使用した治験に向けてさらなる研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PD-1/PD-L1を始めとする、免疫チェックポイント関連分子の研究は幅広く様々な癌種で行われている。しかし、本研究が対象とする2腫瘍に関しての研究報告はほとんどなく、胚腫ではPD-L1の発現の有無に関する報告に留まり、頭蓋内SFT/HPCに関する報告はない。そのため、本研究の意義は大きいと考えて本研究が開始された。 本研究の成果として、SFT/HPCのPD-L1発現と予後とに相関を認めた。この内容に関して論文を投稿、Journal of Neurooncologyにacceptされた。 さらに胚細胞腫瘍の一つである胚腫についても、予後不良群においてPD-L1の発現上昇があり、またPD-1の発現もCD8陽性リンパ球の中の割合を考慮すると上昇していることを見出した。本研究についても論文を作成し、現在投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
頭蓋内SFT/HPC及び頭蓋内胚細胞性腫瘍では全例でPD-L1が発現しており、また臨床経過と腫瘍免疫回避機構との関連が示唆されている。腫瘍におけるPD-L1発現メカニズムを解析し、発現そのものをブロックすることにより、腫瘍免疫が増強される可能性がある。PD-L1発現メカニズムは腫瘍により異なるが、免疫染色でのPD-L1高発現例、低発現例をマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析を行う。PD-L1発現と相関する分子シグナル経路の候補を選定、RT-PCRにより確認する予定である。 胚細胞腫瘍の進行速度と腫瘍免疫との関連が示唆されており、従って、免疫チェックポイント分子阻害などの免疫治療が有効な可能性があると考えている。一方、胚細胞腫瘍は前頁図のように多数のリンパ球の混在があるため、しばしば腫瘍の遺伝子検索が困難である。当院ではlaser capture microdissection(LCM)を用いて、ホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)から細胞単位でDNAを回収することが可能であり、本手技を用いてDNA解析を進める方針となっている。 PD-L1発現に関わる分子経路を見出すことができた場合、培養細胞を用いて、その阻害剤やsiRNAなどで処理をすることにより、PD-L1の発現の変化を、FACSを用いて評価し、その関連を確認する。 頭蓋内SFT/HPCに関して、免疫チェックポイント阻害薬を用いた治験を予定しており、治験に向けて上記の研究をさらに進めている。
|
Causes of Carryover |
予定していたメチル化アレイ解析を翌年度に行うこととしたため
|
Research Products
(2 results)