2018 Fiscal Year Research-status Report
半月板損傷後の修復プロセスの解析に基づいた再生医療実現可能性の検証
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18K16610
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
日山 鐘浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (90815789)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 半月板 / 再生 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス半月板切除後の再生過程の組織学的評価では、切除後3日で、切除部位近傍の滑膜組織へのマクロファージの浸潤、2週後に切除領域近傍の滑膜組織の増生と切除領域への線維芽細胞の浸潤、軟組織の形成が観察される。この軟組織は、切除後4週で軟骨へと分化し、6週で正常半月板とほぼ同等の形態を有する組織へと成熟することを私たちは報告している。半月板切除部位近傍の滑膜における炎症反応が、その後の一連の再生プロセスにおいてどの様な生物学的意義を有するかを検討するため、本研究では、切除後早期に抗炎症剤を投与しその後の再生過程を組織学的に観察した。 C57BL/6マウス(8週、雄)の左膝内側半月板前方1/2切除を行い、1日目(急性期群)または10日目(細胞浸潤期群)にトリアムシノロン(ケナコルト, 2.8μg/7μl)の注射を行った。術後3日、2、6週に屠殺し、半月板の再生過程の組織学的検討を行った。また、同様の実験でケナコルト注射後、2-4日後に滑膜を採取し、14日間dish上で培養し、滑膜細胞のoutgrowthを評価した。 急性期にケナコルトを注射した群においては、その後の切除部位への線維芽細胞の浸潤が非常に強く抑制された。細胞浸潤期にケナコルトを注射した群においては、細胞浸潤ならびに6週で観察される軟骨分化の双方が強く抑制された。滑膜細胞のOutgrowthの評価では、急性期に投与した群では、滑膜組織からDishへの細胞浸潤がほぼ完全に消失したのに対し、細胞浸潤期群においては、浸潤抑制効果は限定的であった。 半月板切除後に観察される炎症反応は、急性期では滑膜組織から切除部位への線維芽細胞の浸潤の賦活化、その後は切除部位において再構築された間葉組織の軟骨分化誘導に必須の働きをしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半月板切除後に観察される炎症反応は、急性期では滑膜組織から切除部位への線維芽細胞の浸潤の賦活化、その後は切除部位において再構築された間葉組織の軟骨分化誘導に必須の働きをしていることを示唆するデータを得た。本実験結果は、当初の仮説を検証することにつながり、概ね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症反応が、半月板の再生に重要な機能を果たしている可能性を示唆するデータを得た。そこで、次年度以降は、内在性のマクロファージを欠失したマウスを用いて同様の検証を試みる。これまでの私の解析から、半月板切除部位に隣接する滑膜におけるCellularityの増加が観察される以前に、同部位へのマクロファージの著明な浸潤が観察されたことから、滑膜における炎症の場の形成にマクロファージが深く関与していると考えている。そこで、Lysosome Mプロモーターの制御下DTR(Diphtheria Toxin Receptor) を発現するトランスジェニックマウス(lysM-Cre/DTR, Goren et al. Am J Pathol 175(1):132-47, 2009)を用いて、Diphteria Toxin投与により単球、マクロファージを欠損させたマウスに対して半月板欠損モデルを作成し、再生過程の検証を行う。 今年度以降、切除部位に形成された肉芽組織の軟骨分化を制御する因子の同定を目的として、半月板切除後に半月板領域に形成される組織における遺伝子発現解析を行なっていく。4週目までに半月板欠損部位に形成された軟組織の軟骨分化が6週にかけて観察されるが、集積した線維芽細胞の軟骨分化がどの様な分子メカニズムで一義的に制御されているかは未知である。そこで、術後3週、4週、5週の時点で再生過程にある組織を採取し、RNA-seq法を用いて、網羅的に遺伝子発現のパターン変化を比較する。Gene Ontology解析を行なって、どのシグナル経路の活性化が生じているかの解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、次年度以降使用予定しているTGマウスの維持費用が、予定よりも少額となった。次年度以降TGマウスのコロニー構築と実験を行なっていくための費用として次年度繰越を行なった。
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