2018 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫におけるWnt経路の役割および古典的経路と非古典的経路の相互作用の解明
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18K16615
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 純 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (20814122)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / Wnt経路 / Wnt5a / LRP5 / LRP6 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い骨肉腫は、異常な類骨および骨形成を特徴とする。骨肉腫は病因・病態の多様性が知られ、新規治療薬の開発が困難な理由とされている。しかし骨芽細胞系細胞由来の悪性腫瘍であることは、全ての骨肉腫に共通する。本研究の目的は、次の4項目である。①骨肉腫におけるWnt経路の役割と、非古典的経路と古典的経路との相互作用を解明する。②非古典的Wnt経路を活性化するWnt5aが、骨肉腫形成や転移においてどのような作用を持つか、その分子メカニズムを解明する。③骨肉腫臨床検体におけるWnt経路活性と臨床成績との関連を明らかにする。④骨肉腫の病態解析を通じて、Wnt経路が新規治療標的となりうるかを検証する。 我々はまずレンチウイルスを用いて骨肉腫細胞株におけるWnt5aの発現をノックダウンすることを試みた。Wnt5aをノックダウンさせるレンチウイルスを購入して使用したが、ノックダウン効率にばらつきが大きく、再現性のある結果はなかなか得られなかった。並行してCRISPR-Cas9システムを用いてWnt5aをノックアウトすることも試みたが、骨肉腫細胞株におけるWnt5aの発現をノックアウトすることはまだできていない。そのためWnt5aをノックダウンさせるアデノウイルスを作製し、その効果を解析中である。 また、骨肉腫の臨床検体の解析を行い、リアルタイムPCRでmRNAの発現を調べた。その結果Wnt5aの発現とLRP5の発現、Wnt5aの発現とLRP6の発現に、それぞれ有意な正の相関があることが明らかになった。臨床成績との関連を現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レンチウイルスによるWnt5aのノックダウンは、その効率にばらつきが大きく、再現性のある結果が得られなかった。CRISPR-Cas9システムによるWnt5aのノックアウトは、骨肉腫細胞株におけるWnt5aの発現をノックアウトすることができなかった。そのためWnt5aをノックダウンさせるアデノウイルスを作製し、現在その効果を解析している。当初本年度に予定していた実験が進まなかったため、翌年度に予定していた臨床検体の解析を前倒して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに作製したWnt5aをノックダウンさせるアデノウイルスを用いて、骨肉腫におけるWnt5aの作用を解析する。Wnt5aの発現を抑制した際の、LRP5やLRP6の発現の変化、古典的Wnt経路活性の変化、βカテニンの細胞内蓄積量の変化を確認し、そのメカニズムを明らかにする。また外因性にWnt5aを加えることにより、Wnt5aのノックダウンによる骨肉腫細胞株の変化をレスキューできるか確認する。 骨肉腫の臨床検体におけるWnt5aとLrp5/6の発現と、臨床成績(腫瘍サイズ、初診時転移の有無、転移出現までの期間、術前化学療法の効果判定、無増悪生存期間、全生存期間など)との関連を解析する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験のうち、レンチウイルスを用いたノックダウンの実験が予定通りに進まなかったため次年度使用額が生じた。次年度使用額は平成31年度請求額と合わせて、アデノウイルスを用いたノックダウンの実験の実施に使用するとともに、当初予定していた消耗品費や人件費などに使用する予定である。
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