2019 Fiscal Year Research-status Report
閉経モデルマウス滑膜内腱の網羅的遺伝子発現解析による狭窄性腱鞘炎の病態解明
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18K16616
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩川 紘子 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (40770772)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Tendon biology |
Outline of Annual Research Achievements |
ばね指やドケルバン病などの手の狭窄性腱鞘炎は、閉経後の女性に多くみられ、さらにこれらは早期閉経女性や出産後女性にもみられることから、エストロゲンがその発症に関連していると推測されてきた。しかし、エストロゲンが発症にどのように関与するのかはその病態や機序は未だ明らかとなっていない。研究代表者は先行研究において1)核内受容体の一種であるエストロゲン受容体(ER)がマウス屈筋腱の腱細胞に発現していること、2)閉経モデルマウスでは、屈筋腱におけるERの発現量が変化 すること、を発見し、エストロゲンが屈筋腱の恒常性維持や機能に影響している可能性を見出した。そこで本研究は閉経モデルマウスの滑膜内腱を用い、それらを分子生物学的アプローチにより解明し、これまで研究が困難であった狭窄性腱鞘炎の病態解明や新しい治療および予防法の開発へ結びつく研究基盤の確立を目的とした。 2018年度は閉経モデルマウスの滑膜内腱のRNA-seq.を行い、網羅的遺伝子解析結果より変異遺伝子群の解析を行った。2019年度では、閉経モデルマウス腱および腱周辺組織の組織学的解析を行った。HE染色、アルシアンブルー染色、また前年度の変異遺伝子の中より複数の遺伝子をピックアップしそれらのコードするタンパク質発現を免疫染色で評価した。今後はサンプル数を増やし定量解析を行う予定である。また、in vitroを用いた腱のprimary cultureに対するエストロゲンの作用に関しても実験中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗がやや遅れている主な原因は、複合組織から成るマウス後肢の解剖学的局在を損なわないための組織切片の作成テクニックの習得、およびサンプルの抗原性を維持した免疫染色の実験系の確立に時間を要したことである。具体的にはパラフィン切片では滑膜内腱がスライドガラスから剥がれ落ちてしまう。脱灰作業を行うと抗原性が失活してしまう、また免疫染色工程において腱や腱鞘などの微小な組織が洗浄時に剥がれおちてしまうなどの問題が生じた。それらに対し、固定脱灰作業を要さない凍結切片の採用や剥離予防の粘着フィルムの使用、染色工程の減少で対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の閉経マウスの滑膜内腱のRNA-seq.においてGene ontology(GO)解析の結果,変動を認めた遺伝子群は急性炎症反応,血管新生に関連している傾向を認めた.また閉経モデルマウスの滑膜内腱では,ERの発現増加を認め、エストロゲンが滑膜内腱の恒常性や機能の維持に重要な役割を担っており,エストロゲンの欠乏が狭窄性腱鞘炎発症に関与していることが推測された。今後は当初の予定通り組織学的検討を継続し閉経モデルマウス群の滑膜内腱には現在遺伝子変動と関連する組織学的変化の観察を行う。タンパクレベルの検討のちはin situ hybridyzationの導入を検討中である。また、動物モデルの苦慮を考慮しin vitroにおける実験も継続して行い腱のprimary cultureを用いたエストロゲンの作用を評価検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画では2018度に海外学会参加の予定であったが、研究の進捗状況により2020年度に実施することとしたため次年度使用額が生じた。また共同研究者への研究指導・謝礼が2019年度未使用であり次年度使用額は 2019年度請求額と合わせ外国旅費、研究指導謝礼として使用する。
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