2019 Fiscal Year Research-status Report
腱再生を制御する分子制御機構の解明による腱再生能力賦活化治療の開発
Project/Area Number |
18K16617
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
河村 真吾 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (30456511)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 再生医療 / 腱細胞 / 筋線維芽細胞 / Scx / αSMA |
Outline of Annual Research Achievements |
腱組織の再生能力を規定する要素として、加齢により変化する“腱細胞の分化状態(エピゲノム)”と“腱損傷後の細胞応答”に着目した。 1週齢(若齢)および6ヶ月齢(高齢)のScx-EGFPマウスを用いてアキレス腱損傷モデルを作製した。損傷前、損傷5日後のアキレス腱を採取し、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行った結果、若齢マウスのアキレス腱損傷部で特異的に活性化されているシグナルXを同定した。Scx-EGFP若齢マウスのアキレス腱損傷モデルに対して、シグナルXの選択的阻害剤を投与した結果、アキレス腱再生部位のEGFP(Scx)およびTnmd発現の低下を認めた。以上より、シグナルXが若齢マウスにおいて腱細胞に備わる生理的修復能を制御していることを確認した。次に、高齢マウスの腱損傷モデルにおいて、腱細胞でのシグナルX活性化を誘導することで生理的腱再生が可能となると仮説を立てた。我々は過去に樹立した腱特異的Cre誘導マウスScx-CreERT2とRosa26-tdTomatoマウスを交配し、仔にタモキシフェンを投与することで、腱特異的Creリコンビネーションを確認した。シグナルXに対する抑制遺伝子AのコンディショナルノックアウトマウスGene Afloxを入手し、Scx-CreERT2/Gene A flox/floxマウスを作製した。 一方で、若齢マウスと比較して高齢マウスの腱損傷部には筋線維芽細胞の誘導が多くみられ、瘢痕形成が強く生じることを同定した。さらに高齢マウスの筋線維芽細胞において、シグナルYの増強を認めた。腱再生部位に誘導された筋線維芽細胞におけるシグナルYの働きを解析するため、筋線維芽細胞特異的Cre誘導マウスαSMA-CreERT2を作製した。今後、Cre依存的シグナルYの活性化マウスおよびノックアウトマウスと交配する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腱再生に寄与すると考えられるシグナルXを同定した。シグナルXに対するinhibitorを投与することで腱再生が抑制されることを確認した。また、腱特異的にシグナルXを活性化可能なマウスCre依存的コンディショナルマウスScx-CreERT2/Gene A flox/floxマウスを作製できた。さらに、筋線維芽細胞特異的Cre誘導マウスαSMA-CreERT2を作製することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
シグナルXを活性化可能な腱特異的コンディショナルマウスScx-CreERT2/Gene A flox/floxマウスを使用する。この高齢マウスにタモキシフェンを投与して腱細胞特異的にGene Aをノックアウトし、シグナルXの活性化を誘導した後、アキレス腱損傷モデルを作製する。腱再生部の免疫染色(腱マーカー:Scx, Tnmd, Collagen I) 、電子顕微鏡解析(コラーゲン線維数および線維径)、力学強度試験を行い、腱再生効果を評価する。さらに高齢マウスのアキレス腱損傷モデルに対して、シグナルX活性化剤を投与することで、生理的腱再生が得られるか否かを確認する。 また、本年度に作製したαSMA-CreERT2とCre依存的シグナルYの活性化マウスおよびノックアウトマウスと交配して仔を得る。仔が成体となった後にアキレス腱断裂モデルを作製し、損傷後5日目にタモキシフェンを投与して筋線維芽細胞でCreリコンビネーションを誘導する。シグナルYの安定化またはノックアウトによって生じる腱再生部の組織学的変化を、免疫染色(瘢痕マーカー:αSMA , Collagen III, 腱マーカー:Tnmd, Collagen I)や電子顕微鏡にて解析する。シグナルYが筋線維芽細胞を正に制御する(瘢痕形成を促進する)ことが明らかとなった場合、本シグナル阻害剤を投与することで、高齢マウスの腱損傷部の瘢痕形成が抑制されるか否かを確認する。
|
Research Products
(2 results)