2018 Fiscal Year Research-status Report
明細胞肉腫に対するLAT-1阻害剤を用いた新たな抗癌剤治療法の開発
Project/Area Number |
18K16623
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森下 雅之 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (30814321)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LAT1 / LAT1阻害剤 / アポトーシス / 明細胞肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
明細胞肉腫は,若年成人の四肢に後発する予後不良で極めて稀な疾患である.しかし,治療は外科的切除以外に有効な治療法がなく,希少疾患ゆえに新たな抗がん剤治療法の検討はほとんどなされていない. 近年,腫瘍細胞膜に特異的に発現するアミノ酸輸送体として同定されたLAT1( L-Type Amino Acid Transporter 1) は,細胞増殖に必要な必須アミノ酸でありLAT1阻害剤による全身的な腫瘍制御の可能性が期待されている.研究協力者である藤本卓也医師らは明細胞肉腫におけるLAT1の高発現を学会報告している.そこで,本研究では明細胞肉腫に対するLAT1阻害剤の抗腫瘍効果を評価することとした. 平成30年度は,in vitroにおいて,ヒト明細胞肉腫細胞株MP-CCS-SYを用いてLAT1選択的阻害剤であるJPH203を作用させ,その抗腫瘍効果について検討を行った.まず,WSTアッセイを行い,ヒト明細胞肉腫において初めてLAT1阻害剤が抗腫瘍効果を示すことを明らかにした.また,ドキソルビシンとの併用効果についても検討したところ,併用による相乗効果を示した.続いて,LAT1阻害剤によるアポトーシス誘導効果をフローサイトメトリにて評価したところ,LAT1阻害剤単独では有意なアポトーシス誘導は認められなかったが,ドキソルビシン併用下ではドキソルビシン単独群と比較してアポトーシス細胞の増加を認めた. 以上から,ヒト明細胞肉腫におけるLAT1阻害剤の有効性が示唆され,今後もin vitro,in vivoでの検討を続ける予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗がやや遅れている理由として,まず,LAT1選択的阻害剤JPH203の適正量についての設定が困難であったことが挙げられる.我々の条件下においては,JPH203は一定濃度以上で析出するため高濃度で作用させることが困難であった.そのため,供給元に処理方法について詳細な情報提供を受ける必要があった. また,LAT1阻害剤単独作用において十分なアポトーシス誘導効果が得られなかったため,抗がん剤との併用についても検討する必要が生じた. LAT1阻害剤が抗腫瘍効果を示す機序の解析のため,アポトーシス・オートファジー関連タンパクをウェスタンブロッティングにて検討中であるが,現時点では明らかな知見は得られていない.どの経路により抗腫瘍効果を呈するのか,さらなる検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,LAT1阻害剤が抗腫瘍効果を呈する機序の検討を行う.アポトーシス・オートファジー関連タンパクの抗体を購入し,ウェスタンブロッティング等にて検討を継続する. また,ガスクロマトグラフィー質量分析法等の手法により,LAT1阻害剤による必須アミノ酸取り込み阻害の計測を検討している. さらに,in vivoにおいて,明細胞肉腫をヌードマウスの背部皮下に移植したモデルを作成し,LAT1阻害剤またはLAT1阻害剤とドキソルビシン等の抗がん剤の併用における腫瘍増大抑制効果について検討を行う予定である.得られた結果について,学会,論文等で報告を行う.
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Causes of Carryover |
前述のとおり,LAT1阻害剤JPH203の処理について供給元に情報提供を依頼して検討をする必要があったため,WSTアッセイの後に実施予定であった,フローサイトメトリやウェスタンブロッティングなどの開始が遅れたことが要因と考える.そのため,予算として計上していたウェスタンブロッティングの試薬の購入が減少している. また,本年度に実施予定であったガスクロマトグラフィー質量分析法にてアミノ酸取り込みの測定についても次年度に行うこととしたため,使用額が減少した.
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Research Products
(1 results)