2018 Fiscal Year Research-status Report
肩腱板断裂に対する新しい治療法、上方関節包再建術の生体内治癒メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K16636
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
長谷川 彰彦 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80733427)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肩腱板断裂 / 上方関節包再建術 |
Outline of Annual Research Achievements |
肩腱板断裂患者の治療では腱板修復を行うが、大断裂(3cmから5cm)、広範囲断裂(5cm以上)においては腱板の修復が困難な場合も多く、しばしば治療に難渋する。さらに、腱板断裂を修復しなかった場合、腱板断裂関節症(cuff tear arthropathy)と呼ばれる変形性関節症へと進行することが知られている。当教室の三幡らは修復困難な腱板断裂に対する新しい治療として大腿筋膜グラフトを用いた上方関節包再建術を考案し、生体力学的に良好な機能回復が得られることと、臨床において良好な短期成績を報告してきた。本研究では、兎腱板断裂モデルに対して大腿筋膜グラフトを用いた上方関節包再建術を行い、生体内において大腿筋膜グラフトがどのように骨との間で生着し、治癒していくかを明らかにするとともに、上方関節包再建術を行うことにより、変形性関節症の進行を制御する効果について明らかにするものである。 平成30年度は日本白色家兎の棘上筋腱と棘下筋腱に欠損(腱板広範囲断裂モデル)を作成し、同側の大腿から採取した大腿筋膜を移植して上方関節包再建術を施行した。修復後に、手術手技の問題によって移植した大腿筋膜の断裂が起こっていないことを確認するために、予備実験で1羽の日本白色家兎を術後2週で屠殺し、移植した大腿筋膜が縫合部、実質部のいずれにおいても断裂していないことを確認したのちに本実験を開始した。現在までに、16羽の日本白色家兎に対して手術を行なったが、これまでに術中、術後早期に死亡した例もないことから、動物モデルの作成に関しては概ね順調に進行している。 また、予備実験で屠殺した日本白色家兎から両肩関節組織を採取し、固定、脱灰後にパラフィン包埋を行い、組織学的検討を行う上での手技を問題なく行えることを確認済みである。 今後は引き続き、同一のモデルのnを追加し、順次組織学的検討行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本白色家兎の棘上筋腱と棘下筋腱に欠損(腱板広範囲断裂モデル)を作成し、同側の大腿から採取した大腿筋膜を移植して上方関節包再建術を施行している。修復後に、手術手技の問題によって移植した大腿筋膜の断裂が起こっていないことを確認するために、予備実験で1羽の日本白色家兎を術後2週で屠殺し、移植した大腿筋膜が縫合部、実質部のいずれにおいても断裂していないことを確認したのちに本実験を開始した。現在までに、16羽の日本白色家兎に対して手術を行なった。手術時間も徐々に短縮しており、またこれまでに術中、術後早期に死亡した例もないことから、動物モデルの作成に関しては概ね順調に進行している。 また、予備実験で屠殺した日本白色家兎から両肩関節組織を採取し、固定、脱灰後にパラフィン包埋を行い、組織学的検討を行う上での手技を問題なく行えることを確認済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、同一のモデルのnを追加し、順次屠殺して組織学的検討行う予定である。 組織学的検討としては、両肩関節を摘出して組織学的評価および分子生物学的評価を行う。組織学的評価としてヘマトキシリンエオジン(HE)染色とサフラニンO染色、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型コラーゲンに対する免疫染色を行い、移植した大腿筋膜と上腕骨および肩甲骨との間での組織修復過程と、関節軟骨の関節症性変化の進行について評価を行う予定である。 組織学的評価:肩関節組織は固定、脱灰後にパラフィン包埋を行い、薄切して組織切片を作成する。HE染色、サフラニンO染色とⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型コラーゲンに対する免疫染色、Picrosirius red染色を行うことで、移植した大腿筋膜と上腕骨との間で正常なenthesisに類似した組織修復反応が起こるかどうかを評価するとともに、移植した大腿筋膜における血管新生が起こるかどうかを血管新生マーカー(CD31)の免疫染色を行い、単位面積あたりのcapillary densityを定量的に評価する。さらに、サフラニンO染色で肩甲上腕関節軟骨における関節症性変化の有無を評価する予定である。 平成31年度中に動物モデルの作成と組織学的検討を終え、平成32年度に研究成果を日本肩関節学会、日本整形外科学会基礎学術総会及び、申請者がActive memberである米国整形外科基礎学会(Orthopaedic Research Society)において発表する。また論文はOrthopaedic Research Societyのofficial journalであるJournal of Orthopaedic Researchなどのクオリティジャーナルに投稿する。
|
Causes of Carryover |
動物モデルの作成を順次行なっているが、初年度は動物(日本白色家兎)の購入とモデル作成に必要となる麻酔薬剤、滅菌器具による支出のみであり、組織学的検討に必要な薬剤、試薬の購入に至っていないため、次年度使用額が生じました。 平成31年度は動物モデルの作成は順調に進んでいるが、n数の追加のために日本白色家兎の追加購入を行う予定である。また、術後4、8、12、16週に順次屠殺し、組織票本を作成した上で各種の組織学的検討(ヘマトキシリンエオジン(HE)染色、サフラニンO染色、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型コラーゲンに対する免疫染色、血管新生マーカー(CD31)に対する免疫染色)等を行なっていく予定である。 平成31年度は日本白色家兎の追加購入、組織染色に関わる試薬の購入に科研費を使用する予定である。
|