2018 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷回復期に重要なモノアミンの脊髄前角運動ニューロンに対する作用機序の解明
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18K16648
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
庄司 寛和 新潟大学, 医歯学総合病院, 客員研究員 (60783347)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊髄前角細胞 / モノアミン / 脊髄損傷 / 電気生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究成果は、脊髄前角細胞に対するノルアドレナリン(NA)の作用機序を電気生理学的実験により調査し、解明したことである。 幼若ラットの脊髄横断スライスを作成し、脊髄前角細胞にホールセル・パッチクランプ記録(主に膜電位固定法)を適用した。NAやその選択的受容体アゴニストまたはアンタゴニスト投与による膜電流の変化や、主に興奮性シナプス後電流 (EPSC)の頻度・振幅の変化を検討した。 NA 40μMの灌流投与によりEPSCの頻度 (コントロール比214%)と振幅 (184%)が有意に増加したが(p<0.01)、活動電位を遮断するテトロドトキシン存在下にこれら増加は完全に抑制された。また、NA 40μM投与にて脊髄前角細胞自体の興奮性増強を示す内向き電流 (振幅平均55.4pA)を生じた。NA投与によるEPSCの頻度の増加および内向き電流はα1またはβ受容体アンタゴニストにより有意に抑制されたが、α2受容体拮抗薬では抑制されなかった。また、α1またはβ受容体アゴニスト投与によりNA同様にEPSCの頻度・振幅の有意な増加を認めた。 脊髄前角細胞において、NAは興奮性シナプス伝達を活性化した。この反応はテトロドトキシンにより抑制されることから、シナプス前終末への直接作用ではなく、NAが神経回路網を形成する介在ニューロンに作用して神経伝達物質放出を促進しているといえる。また、アゴニストとアンタゴニスト投与の結果より、NAによる変化はα1およびβ受容体を介した作用であるといえる。脊髄損傷回復期に重要な神経回路網の活性化において、本研究結果よりノルアドレナリンを介した方策について基礎的かつ新規の知見が得られた。脊髄前角神経細胞に対し筋攣縮との関連を示したα受容体作用の報告はあるもののβ受容体作用に関する報告はなく、今回申請者らはβ受容体を介した適度な神経回路網活性化の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究手法である電気生理学的実験は過去にも自施設で行われてきたもので、確立されていたため、順調な進展は予想通りともいえる。一方で今後の研究のうち、特に脊髄損傷モデルを用いた研究に関しては1つ1つ確立していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織学的実験により電気生理学実験の結果を補完する。 回復期の脊髄損傷モデルラットを用いた運動神経や感覚神経回復に関する行動実験にて、モノアミン、特にノルアドレナリン受容体アゴニスト製剤の効果を確認する。まずはモデルラットの確立をする。その後、モデルラットに対し、複数の薬剤投与濃度、投与時期を設定し、その反応・効果を比較検討する。もしノルアドレナリンアゴニストのみでは効果が得られにくい場合、他のモノアミンとしてセロトニン作動性でもあるセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬などの投与も検討する。
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Causes of Carryover |
電気生理学的実験装置の経年劣化があり更新の必要性があったが、昨年度中の実験は行えていたため、条件の変化を避ける意味でも実験機材の更新は行わなかった。今年度、実験の区切りがついたところで実験装置の一部の更新を行うために予算を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)