2018 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫と免疫細胞の相互作用の解明による骨肉腫に対する新規治療標的の探索
Project/Area Number |
18K16652
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 和薫 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (60770774)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Wnt / PD-1 / 骨肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は骨肉腫において抗PD-1抗体を投与した際のWnt古典経路標的遺伝子の発現低下をベースとして進めている。追加で行った実験において抗PD-1抗体の投与を短期間群(週2回、合計4回)と長期間群(週2回、安楽死基準を満たすまで)に分けて行ったところ、長期群においてWnt古典経路標的遺伝子の発現が低下する傾向がみられた。また、Wnt古典経路の代表的なリガンドであるWnt3a発現が上昇する傾向がみられ、同時にWnt非古典経路の代表的なリガンドであるWnt5aの発現が有意に上昇した。本研究のキーポイントの一つであるWnt古典経路とWnt非古典経路の協調は、骨芽細胞においてはLRP5/6の発現上昇を介して起こっていたが、今回の結果ではLRP5発現は低下傾向、LRP6発現は上昇傾向であり、骨芽細胞における協調のメカニズムとは一致しない結果であった。以前の実験データにおいてはPD-1抗体投与時のLRP5発現は上昇する傾向があり、骨肉腫は骨芽細胞系の悪性腫瘍であり、同一のメカニズムによりWnt古典経路と非古典経路が協調的に作用していることが予想されたが、少なくともLRP5の動態においてはほかに調節に関与する因子があることが予想される。 本研究の前提となる抗PD-1抗体の抗腫瘍効果はすべての実験において再現性良く確認されている。抗PD-1抗体が本来のT細胞免疫を再活性化させるという働きのほかに、骨肉腫のWnt古典経路活性を低下させることで抗腫瘍効果を得ている可能性に関連し、ヒト骨肉腫においてWnt経路抑制の予後に対する効果を予測するために臨床検体でWnt古典経路活性と予後の関係を評価した。結果はLRP5陽性と早期の肺転移が有意に相関した。LRP5はWnt3a、Wnt5aとも有意に正の相関を示した。この結果はマウスモデルでの結果がヒト骨肉腫においても成り立つ可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである骨肉腫における抗PD-1抗体の作用に関しては当初の予想とは異なる結果が出てきている。投与群を2群に分けより詳細に抗PD-1抗体が骨肉腫に与える影響を評価したところ、Wnt古典経路の標的遺伝子の発現が低下する傾向はみられるものの、有意差をもって示されなくなっている。本研究はTh17細胞を基軸に抗PD-1抗体が骨肉腫においてWnt古典経路を抑制するメカニズムを解明することが目標の一つであったが、その点でやや遅れが出ている。 しかし、骨芽細胞におけるWnt古典経路とWnt非古典経路の協調が骨肉腫において起こるかどうかという評価においてはWnt5aとWnt3aの相関を評価する限りでは同様に起こると予測できる結果となっている。また、LRP6については同様の作用をするものの、LRP5においては異なる動きをすることが分かってきた。この差異を評価することでWnt古典経路と非古典経路の協調という面での新しい知見が得られることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
抗PD-1抗体投与時のWnt古典経路活性についてはより詳細な評価が必要であり、評価が定まったのちにTh17関連の実験に着手せざるを得ない。投与時の検体を用いてウエスタンブロットや免疫染色など多角的な評価を加えていく予定である。同時並行で進めているWnt古典経路と非古典経路の協調においては骨肉腫においても骨芽細胞と同様の結果が得られている。しかし、骨芽細胞におけるWnt古典経路活性上昇がWnt非古典経路の活性化によるLRP5/6の発現上昇をメカニズムとしていることとは異なり、骨肉腫においてはLRP5は発現低下、LRP6は発現上昇となっている。本結果が骨肉腫に特有の現象なのか、抗PD-1抗体を投与することで起きている現象なのかは不明であるが、今後検証を進めることで新しい知見が得られる可能性が高い。具体的にはWnt古典経路の阻害剤の使用や、LRP5/6の過剰発現骨肉腫細胞を作成するなどして検証を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
(理由)当初計画で見込んだよりも安価で遂行できたため、若干の次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度分と合算し、予定通り実験試薬、マウスの購入維持に使用する。
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Research Products
(1 results)