2021 Fiscal Year Research-status Report
RUNX2を活性化するランソプラゾールに着目した新規骨再生製剤開発の基盤研究
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18K16656
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡部 由香 (塚越由香) 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20468383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨形成 / 骨髄由来間葉系幹細胞 / ランソプラゾール / 頭蓋骨欠損モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
水溶性ランソプラゾールは代表的な消化管潰瘍治療の一種として、広く処方されている薬剤である。我々はランソプラゾールが、骨芽細胞分化のマスター遺伝子として知られるRunx2の発現を上昇させることによって骨形成を促進するオフラベル効果をもつことに着目して実験を進めている。 これまでの解析で、培養骨髄細胞と水溶性ランソプラゾールを頭蓋骨欠損モデルマウスに移植したところ、水溶性ランソプラゾールに骨分化促進効果があることを示唆する所見が得られた。 購入した間葉系幹細胞を用いたin vitroの解析で、短期間水溶性ランソプラゾールを添加するとRunx2の発現が上昇し、ALP活性およびオステオカルシンの産生が上昇することが確認された。しかしながら、購入した間葉系幹細胞は採取した骨髄を数回継代した後に販売されているため、培養液等の培養条件により、採取したばかりの骨髄細胞と比較すると、細胞の性質が変化する可能性が否定できない。そこで、実際の条件で検証するため、患者由来の骨髄細胞を用いて、骨芽細胞の分化度を評価した。 採取した骨髄細胞を一晩プラスチックシャーレ上で培養後、フローサイトメーターにて間葉系幹細胞マーカーの発現を解析した。その結果、間葉系幹細胞マーカーとして知られるCD73、CD90、CD105を多くの細胞が発現していることを確認した。また、購入細胞で決定した条件で、患者由来の細胞を水溶性ランソプラゾールとともに培養したところ、骨芽細胞マーカーとして知られるオステオカルシンと、石灰化の指標であるアリザリン染色にて、骨芽細胞に分化していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度から2年度目は、申請者が産前、産後休暇および育児休暇を取得した関係で遅れが生じた。 また2年度目以降は、新型コロナウィルス感染症の影響により、実験の停止およびテレワーク勤務を実施せざるを得ない状況があったため、さらに遅れが生じた。現在は、感染状況を踏まえながら実験を再開しているが、これらの影響で遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた情報をもとに、水溶性ランソプラゾール、骨髄細胞、担体を組み合わせて、骨欠損モデル動物に移植後、骨再生の解析を実施する。 また、今後も引き続き、新型コロナウィルス感染症の発生状況を踏まえながら、感染対策を実施の上進めていく。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたin vitroにおける水溶性ランソプラゾールの至適濃度、添加期間の検討について、出産と新型コロナウィルスの発生により遅れが生じたため、継続して実施した。これらの解析は、手持ちのもので実施でき、新たに試薬、プラスチック消耗品等を追加購入する必要がそれ程生じなかった。また予定していた動物実験に着手できなかったため、実験用動物の購入・飼育費、放射線学解析費等が発生しなかったため、次年度使用額が発生した。 翌年度は、「8.今後の研究の推進方策」に記載した課題を解決するための解析を行う。 具体的には、生体内において水溶性ランソプラゾール、骨髄細胞、担体を組み合わせた新規骨再生製剤の有効性を確認する。そのため、解析に必要な細胞、培養試薬、消耗品、動物を購入予定である。また動物の飼育費も発生する。
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