2018 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫細胞の浸潤・転移機構におけるケモカインの意義の解明
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18K16666
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
岩崎 達也 大分大学, 医学部, 助教 (30769427)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 間葉系幹細胞 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
骨肉腫は最も発生頻度の高い代表的な原発性悪性骨腫瘍である。骨肉腫の増殖や浸潤・転移など悪性形質発現には、腫瘍自身の性質のみならず、周辺微小環境が大きく影響することが知られており、骨肉腫細胞が周辺細胞の性質を変化させ利用していると考えられている。この現象には細胞間の直接接触が重要とされているが、本研究において我々は、細胞接触が不要な液性因子による相互作用が大きな役割を担うという仮説に基づき、その分子機構について解析する。我々は、骨肉腫細胞がより効率的に微小環境さらには遠隔転移先の状態を好腫瘍性に改変するために、液性因子が中心的に使われているという着想のもと、我々はヒト骨肉腫細胞株MG63とヒト間葉系幹細胞hMSCsおよびヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECの共培養モデルを作成した。即ち本研究の目的は、骨肉腫の悪性形質発現における液性因子を介した微小環境内のsignal cross-talkの意義を解明することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これらの細胞株を単独培養した場合と共培養した場合のmicroRNAおよびmRNA発現の変化をマイクロアレイ法により網羅的に解析し次のようなデータが得られた。① MG63において、単独培養と比較してhMSCと共培養した場合に2倍以上・1/2以下の発現異常を示すmicroRNAを2150個、mRNAを7378個、同定した。② hMSCsにおいて、単独培養と比較してMG63と共培養した場合に2倍以上・1/2以下の発現異常を示すmicroRNAを1881個、mRNAを6903個、同定した。③ MG63において、単独培養と比較してHUVECと共培養した場合に2倍以上・1/2以下の発現異常を示すmicroRNAを3064個、mRNAを5307個、同定した。④ HUVECにおいて、単独培養と比較してMG63と共培養した場合に2倍以上・1/2以下の発現異常を示すmicroRNAを836個、mRNAを707個、同定した。本研究では、これらの発現変化を示す遺伝子の中から液性因子であるケモカインに焦点を絞り、骨肉腫細胞と間葉系幹細胞および血管内皮細胞の間でsignal cross-talkを形成している因子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに重要なケモカインを候補因子として同定しており、予備的実験から骨肉腫細胞は正常細胞を自らのサポート役となるように変化させる因子を放出し、その刺激により周辺細胞から放出される因子を受け取るsignal cross-talkのループを構築している可能性が示唆されている。昨年度行った上記の研究成果をもとに、本研究は骨肉腫とその微小環境内における液性因子を介したsignal cross-talkのメカニズム解明と臨床応用に展開するための基礎となる研究を行う。具体的には研究期間内に以下のことを明らかにする。① 網羅的解析により抽出した液性因子のリコンビナント蛋白質および中和抗体を用い単独培養および共培養でsignal cross-talkループを形成している因子を同定する。② 同定した液性因子が細胞増殖に影響しているか、骨肉腫細胞にリコンビナント蛋白質および中和抗体を投与することで検証する。③ 抗体の有無による浸潤能の変化をmotility assay, invasion assayで評価する。
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Causes of Carryover |
学会発表するまでのデータが揃わず、旅費と論文発表に至らず、使用額の差が生じたため。2019年度に発表を行うため旅費とその他は予定通り支出する予定である。
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