2018 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞シートと組織移植を融合させたハイブリッド型自家神経作成の試み
Project/Area Number |
18K16672
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70464667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自家神経 / 血管柄付き神経移植 / 間葉系幹細胞 / 末梢神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経再生誘導管(以下人工神経)や同種神経は、近年自家神経に代わる新たなマテリアルとして開発されているが、iPS細胞や各種成長因子を添加させても自家神経移植に及ばないのが現状である。しかし、その自家神経移植についても再生可能な距離は数㎝と限界があり、長い欠損部やレシピエント側の神経が太い場合には移植片内部に供給される血流を確保できない。最も再生能に優れた神経移植は、自家神経に栄養血管を付加させた『血管柄付き神経移植』である。しかし、遊離血管柄付き神経移植術は極めて高度な技術が必要であり、一般的には臨床応用が進んでいない。 本研究の目的は、再生医療技術と微小血管外科の手技を用いて自家神経の移植片に血流を付加させることである。具体的には、再生医療の技術を用いて作成した『間葉系幹細胞シート』と、微小血管外科の手技を用いて作製した『血管柄付き筋膜脂肪弁(Vascularized adipofascial flap)』を自家神経と組み合わせることで、『血管柄付き神経』に匹敵する『ハイブリッド型自家神経』(Vascularized tissue engineering nerve)を作成するための基礎的研究を行う。 すでに『血管柄付き筋膜脂肪組織』を遊離自家神経移植術と組み合わせることで、有髄神経軸索数の増加や、有髄神経軸索径の増大、髄鞘の厚みの増大が報告されているが、『遊離血管柄付き神経移植術』との神経再生能を比較した報告はない。『ハイブリッド型自家神経』(Vascularized tissue engineering nerve graft)が我々の意図した方法で作成可能であるか、そして同神経移植が『血管柄付き神経移植』に匹敵できるかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7週齢Fischer344ラットの両側大腿骨から骨髄間葉系細胞を採取しT75フラスコを用いて初期培養を行う。細胞培養は、MEMに15%牛胎血清(FBS)と抗生剤を加えたものを標準培地として使用する。2週間後に、トリプシンを用いて細胞を培養皿から遊離させ、これを1×104cell/cm2の細胞密度で6cm径の培養皿に播種する。アスコルビン酸(AscP;82μg/ml)添加標準培地で二次培養を行い、2週間後にスクレパーを用いて『BMSCシート』を採取する。この『BMSCシート』の作製法は完成している。 10mmの坐骨神経欠損モデルをラットで作成し、以下の6つの実験群を作製する。①同系ラットの坐骨神経を10mm採取し遊離自家神経移植術を行うAutologous nerve群;AN群、②①で自家神経の周囲を『BMSCシート』で被覆するHybrid nerve群;HN群、③遊離血管柄付き神経移植術(20mm)を行うFree vascularized nerve graft群;FVNG群、④自家神経の移植片をラットの背部皮下に移植する群negative control群;PC群、 評価法として、まず術後4週で、坐骨神経内の軸索再生の評価を長軸像で免疫組織学的行った(成長円錐;GAP43、再髄鞘化部;NF-1、神経細胞;S-100、死細胞;TUNEL)。 結果は、坐骨神経の移植片は背部皮下では軸索伸長がないことを④群で確認。これをもとに①、②、③群のシュワン細胞のアポトーシスの率、移植片の内部における軸索伸長の数、速度を比較している。現在免疫染色の結果待ちであり、①と③では明らかに有意差があった。②がどのくらい③と比較して、どのような結果が出るのかを評価していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の実験を、免疫染色の結果をもとに、術後早期である3, 7, 10, 14日での評価を行う。さらには術後4, 8, 12, 16週で、前脛骨筋の筋力、筋実質量、電気生理学試験で複合筋活動電位(compound muscle action potential;CMAP)、足関節の可動域、腓骨神経の組織形態計測を行い、神経再生を評価する。血管内内皮細胞に対してCD31、CD34、SMα-actinで染色し、その局在を評価する。血管新生の評価はICG(Indocyanine green)を用いた近赤外線蛍光イメージング手法を用いてラットに尾静注したICGを赤外線カメラで撮像することでも行う。 最終的には、ヒト間葉系幹細胞を用いた研究として、ラットの細胞で得られた結果をもとに、ヒト間葉系幹細胞を用いて検証を進める。Lonza社(ロンザジャパン株式会社)から購入し たヒト骨髄間葉系幹細胞(hBMSC: PT-2501;CD105, CD166, CD29, CD44:陽性、CD13, CD34, CD45:陰性)を用いて効果を検証する。予備実験において、hBMSCでもラット同様に『BMSC シート』が作製できることは確認しており、微小血管外科手技の融合による自家神経との『ハイブリッド型自家神経』の実現の可能性が高い。免疫不全動物の坐骨神経欠損モデルを用いて、同様の実験を行いて臨床応用での手技の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
計画通り実施。わずかに残金が出たが、ほぼ予定通りである。
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