2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の食文化に根差したフラボノイドによる膀胱発がん抑制
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18K16705
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (30713945)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 膀胱がん / フラボノイド / チオレドキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト膀胱癌細胞株T24、5637において、ルテオリン暴露下で増殖抑制効果を示し、フローサイトメトリーではアポトーシスの亢進が認められた。特定の細胞周期のarrestは認められなかったが、細胞周期関連タンパクのWestern blottingではp21の発現亢進ならびにCyclinA/D1の発現低下が認められた。またルテオリン暴露に伴い、細胞内ROSを評価するDCFH assayではROSが減少しており、還元型Thioredoxin活性を評価するthioredoxin assayからはthioredoxin活性の低下を認めた。 BBN膀胱発がんラットでは全固定において膀胱がんの発生を認め、ルテオリン投与群の肝・腎では組織学的に明らかな障害を認めなかった。ルテオリン100ppm群では、腫瘍が増殖抑制される傾向を認め、またルテオリン20ppm、100ppm群では、扁平上皮細胞への分化が優位に多かった。膀胱腫瘍のTUNEL染色、p21免疫染色では3群間に差を認めなかったが、Ki67免疫染色において陽性率はルテオリン20ppm、100ppm群で優位に減少していた。またルテオリン100ppm群の18匹、Control群の10匹でルテオリンの血中・尿中濃度を測定したところ、尿中ルテオリンの代謝物質ルテオリングルクロニドの濃度が高い個体ほどKi67が低値を示すという相関が認められた(r=-0.41, Peasonの相関係数)。 以上よりルテオリンは膀胱がんにおいて、有害事象を生じることなく増殖抑制効果を認めることが明らかになった。今後は増殖抑制メカニズムをin vivo、in vitroで検証し、その結果をもとにヒト検体においても検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroの実験においては当初予定していた、増殖抑制効果や細胞周期、アポトーシスの評価をするだけではなく、酸化ストレスと体内の酸化ストレス調節機構の一つであるチオレドキシンに着目し、酸化ストレスを介した膀胱がんの抑制効果としての働きも確認できている。 動物実験においては、マウスにBBN投与した膀胱発がんモデルを予定しそのプロトコールで施行したが、BBN投与期間の問題か膀胱がんがほとんど形成されておらずルテオリンの膀胱がんに対する効果が評価できなかった。そこで動物種をラットに変更し、BBNを投与する期間を4週から10週間に伸ばし、より膀胱腫瘍を形成するプロトコールで施行したところ、全例に腫瘍を形成した。発がんの抑制を証明することはできなかったが、BBN膀胱発がんラットの膀胱腫瘍を検証したところ増殖抑制の傾向を確認できた。また同時にルテオリンが有害事象をきたさないことも確認できた。免疫染色は現時点でin vitroで発現差を認めたものを検討しているが、今後新たな遺伝子やリン酸化シグナル等が同定されれば、適宜追加して検証していく予定である。 また当初の予定にはなかったが、ルテオリンの吸収・代謝という点に着目し、ルテオリンのアグリコンならびに代謝物(グルコシド、グルクロニド)の血中・尿中濃度を測定した。このことより、ルテオリンのアグリコンだけではなく、ルテオリン代謝物のvivoにおける増殖抑制効果も評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroにおいてはルテオリン暴露に伴うシグナル変化を検出するために、ヒト膀胱がん細胞株T24にルテオリンを暴露した細胞と暴露していない細胞との比較試験を検討している。まず両者から抽出したRNAを用いて、メッセンジャーRNAとマイクロRNAのマイクロアレイを予定している。またリン酸化シグナルを検出するために、両者から抽出したタンパクを用いてプロテオソーム解析を検討している。そしてこれらのデータを統合的に解析するためにIPA (Ingenuity Pathway Analysis)を行い、中心となっているシグナルならびに遺伝子候補を絞り込む。そしてシグナルならびに遺伝子を絞り込み、まずは公共のデータベースを用いて膀胱がんの予後に寄与する遺伝子かどうかを検証してから、実際に膀胱がん細胞株に対してノックダウンや過剰発現系を用いて細胞増殖などの細胞株における表現系を確認する。 in vitroで優位な遺伝子ならびにリン酸化シグナルだと確証が得られたら、ヒト検体の検証を行う予定である。膀胱がん患者150名のデータベースをすでに作成しており、その解析に必要な倫理委員会の書類も取得済みである。絞り込んだ遺伝子やシグナル伝達に関わる分子の免疫染色を行い、その予後との相関を検証する。そしてどのような患者にルテオリンの効果があるかを統計学的に考察する予定である。 またin vivoの実験として、ヌードマウスにラット膀胱がん細胞株BC31を皮下移植し、ルテオリンを混餌投与させた、皮下移植モデルでのルテオリンの効果の検証も行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究の前提条件である膀胱癌発がんモデルの作成が予定より時間がかかったため、初年度計画をすべて実行することができず、次年度使用額が生じた。膀胱癌発がんモデルは作成できたので、遅れを取り戻しつつフラボノイドを用いた発がん抑制の研究をおこなっていく。
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[Journal Article] GPX2 promotes development of bladder cancer with squamous cell differentiation through the control of apoptosis.2018
Author(s)
Naiki Taku, Naiki-Ito Aya, Iida Keitaro, Etani Toshiki, Kato Hiroyuki, Suzuki Shugo, Yamashita Yoriko, Kawai Noriyasu, Yasui Takahiro, Takahashi Satoru
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Journal Title
Oncotarget
Volume: 9
Pages: 15847, 15859
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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