2018 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーに着目した前立腺癌細胞におけるスタチンの抗腫瘍効果メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K16722
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
宮澤 慶行 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90647083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 去勢抵抗性前立腺癌 / オートファジー / スタチン / 重粒子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
●スタチン投与を行なった去勢抵抗性前立腺癌細胞株での増殖抑制、浸潤能抑制、遊走能抑制の確認:増殖能の評価をMTSアッセイ、浸潤能はマイクロチャンバープレートを用いたInvasionアッセイ、遊走能をMigrationアッセイにて評価し、抗腫瘍効果とオートファジーの発現の関係を検討した。simvastatin投与により、PC-3、DU-145、LNCaP-LAの増殖能抑制、浸潤能抑制、遊走能抑制を確認した(濃度依存性に増強することも確認された)。 ●スタチン投与によるオートファジー発現の評価:先程の実験結果を元に、simvastatinを投与したPC-3、DU145、LNCaP-LA株においてオートファジー発現について確認を進めている。オートファジー検出キットの使用、共焦点顕微鏡の使用方法などについて実験系を構築中であり、安定した確認方法を確立できるよう準備をすすめている。また、オートファジー発現を評価するため、抗LC-3抗体によるウエスタンブロットも行うこととし、スタチンの濃度依存性にオートファジーが変化するかどうかを蛋白レベルでも定量できないか検討を進めている。 ●重粒子線照射に伴うオートファジーの変化:本学にある重粒子線治療機器を用いて去勢抵抗性前立腺癌細胞株におけるオートファジーの変化、スタチン投与による変化を評価する予定である。同ラボで共同研究を進めている大学院生が現在別の実験系で重粒子線の適切な線量、細胞への変化を検討中であり、これらの結果ももとに実験系を確立しデータを蓄積する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、オートファジー発現の評価を安定して行うことができるよう実験系の習熟に務めており、安定した手技、系統が確立されればさらに研究を推し進めることが可能と思われる。 また、同研究室で他の実験系において重粒子線照射による変化を研究しているグループがあり、共同研究者として実験系を利用することができると思われ、これらも安定してくれば放射線照射とスタチン、オートファジーの関連の研究も推進できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
●薬剤耐性モデルの構築とスタチン、オートファジーの関連の検討:CRPC治療に投与される薬剤としてはEnzalutamide(抗アンドロゲン剤)やDocetaxel(タキサン系抗癌剤)があるが、これらはオートファジーを抑制する作用が報告されている。同様にタキサン系抗癌剤で②で検討予定のあるCabazitaxelはオートファジーを誘導する効果が報告されており、この2剤は交差耐性が少ないことが臨床で多く報告されている。Enzalutamide、Docetaxel耐性細胞においてCabazitaxel+スタチン併用投与がどのような効果をもたらすのか検討し、交差耐性がないことについての検討と新規標的分子の検討をしたい。新規薬剤として登場する可能性のある次世代のアンチアンドロゲン剤であるARN-509やODM-201についても同様に検討を行う予定である。 ●スタチンを投与したゼノグラフトモデルにおけるオートファジー関連遺伝子の発現確認:前立腺癌細胞株をスキッドマウスに移植し作成したゼノグラフトモデルを作成し、②で検討した併用薬剤とスタチン投与による併用効果をin vivoで確認する。また、腫瘍を摘出し腫瘍内部における遺伝子発現をqPCR法で検討する。 ●オートファジー関連遺伝子と前立腺癌患者における悪性度、予後の関連:当研究室では以前に前立腺生検で得られたサンプルから抽出したcDNAデータを多く蓄積しており、このデータをもとに生検時のオートファジー関連の遺伝子発現の程度と予後などの解析を行い、スタチン投与患者と非投与患者の差についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
オートファジー関連の薬剤、検出キット、抗体などが当初の見込みよりも安価で済んだ経緯が影響したものと思われる。 次年度には研究により蓄積されたデータ解析、論文投稿後の追加実験指示などに対応すべくより多くの実験を行うことが予想されるため、次年度にはデータ解析のためのPC、オートファジー検出キット、抗LC-3抗体など研究物品を中心に予算を使用する予定である。
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