2018 Fiscal Year Research-status Report
機能性RNAネットワーク解析に基づく腎細胞癌治療抵抗性獲得機序の探索
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18K16723
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
新井 隆之 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (40793055)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 癌抑制型マイクロRNA / 腎細胞癌 / miR-455-5p / miR-455-3p / SKA1 / SKA3 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の我々の研究において、マイクロRNAのガイド鎖だけでなく、パッセンジャー鎖も癌細胞において癌抑制的、もしくは癌促進的に機能していることを明らかにしてきた。本研究費を用いて遂行した研究では、腎細胞癌細胞におけるマイクロRNA発現シグネチャーに基づいて、miR-455-5p(パッセンジャー鎖)およびmiR-455-3p(ガイド鎖)に焦点を当てた。 miR-455-5pとmiR-455-3pの両方が腎細胞癌組織で発現抑制され、これらのマイクロRNAの低発現が、臨床的に腎細胞癌患者の予後不良と有意に関連していた。miR-455-5pおよびmiR-455-3pの過剰発現により、腎細胞癌細胞の増殖、遊走および浸潤能は、有意に阻害された。マイクロアレイ解析によるゲノムワイドな遺伝子発現解析および、データベース分析を組み合わせることで、それらマイクロRNAが標的とする癌促進遺伝子を同定した。その結果から、有糸分裂の際に染色体分離に深く関与する、SKA1およびSKA3に着目した。 腎細胞癌細胞において、miR-455-5pによるSKA1、およびmiR-455-3pによるSKA3の直接調節を実証した。過去の我々の報告で、SKA1の腎細胞癌組織における過剰発現および、その癌促進的機能は証明している。本研究においては、腎細胞癌臨床標本におけるSKA3の過剰発現を確認した。さらに、miR-455-3p/SKA3軸が腎細胞癌細胞の進展に寄与していることを証明した。マイクロRNAのパッセンジャー鎖を含めて、癌抑制型マイクロRNAに基づく分析戦略は、腎細胞癌におけるの分子的病因の解明のための有効なアプローチである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロRNAのパッセンジャー鎖を含めた解析を継続することで、腎細胞癌における新しい重要な分子ネットワークを同定することができた。miR-455のパッセンジャー鎖であるmiR-455-5pによる細胞周期関連遺伝子SKA1の直接制御及び、miR-455のガイド鎖であるmiR-455-3pによるSKA3の直接制御を証明し、これらの分子軸が腎細胞癌細胞の進展に深く関与していることを証明した。現在、治療抵抗性腎細胞癌組織を用いた解析も継続しており、治療抵抗性獲得にこれらの分子ネットワークがどのように寄与しているかの解明を試みているところである。 また、腎細胞癌における癌抑制マイクロRNA・miR-144-5p(パッセンジャー鎖)が腎細胞癌において癌促進遺伝子syndecan-3を直接制御し、腎細胞癌の臨床的予後にも影響を与えていることを証明した。さらに、miR-532の両鎖(miR-532-5p;ガイド鎖、miR-532-3p;パッセンジャー鎖)が共にAQP9を制御しており、腎細胞癌の進展においてこれらの分子経路が重要であることを証明した。 このように、本申請における研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、腎細胞癌の治療抵抗性獲得に関与する分子経路を、マイクロRNAを起点として明らかにする。現在主に、癌組織で発現低下しているマイクロRNAに着目し、その癌抑制的機能を証明してきたが、今後は、癌組織において発現が亢進しているマイクロRNAにも焦点を当てる。発現亢進しているマイクロRNAをノックダウンすることで、癌細胞の進展性が抑制できればそのマイクロRNAが癌促進的な機能を有していることになる。 また、治療抵抗性を獲得した腎細胞癌臨床検体を用いたマイクロRNA発現プロファイルを用いることで、腎細胞癌治療抵抗性に関与する分子経路を、マイクロRNAを起点として解明していく。同定した分子経路を遮断する事により、腎細胞癌治療において、癌細胞の増殖や転移を抑制し、治療抵抗性獲得を克服する戦略を考案する。以下の研究項目について、順次明らかにする計画で予定ある。 (1)「治療抵抗性腎細胞癌マイクロRNA発現プロファイル」に基づき、腎細胞癌組織で発現が著明に変化しているマイクロRNAについて機能解析を施行し、治療抵抗性腎細胞癌・癌抑制型および癌促進型マイクロRNAを探索する。 (2)それらマイクロRNAが制御する機能性RNAネットワークの探索により、治療抵抗性腎細胞癌で活性化している分子シグナルを見出す。 (3)活性化経路に関与する分子に対して、The Cancer Genome Atlas (TCGA) デーベースを用いて、腎細胞癌の臨床的な関与があるか、検討する。 (4)治療抵抗性腎細胞癌で活性化している分子シグナルを遮断する戦略を考案し、in vitroにおける検証を行う。
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Causes of Carryover |
解析及び物品購入費が高額となるため、H30年度に執行せず、H31年度経費と合算して使用することとした。
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