2018 Fiscal Year Research-status Report
機能性RNA発現解析に基づく去勢抵抗性前立腺癌・治療抵抗性に関わる分子経路の探索
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18K16724
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
加藤 繭子 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80733857)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 去勢抵抗性前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌の治療法であるアンドロゲン除去療法に対する耐性機構を獲得すると、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)へと変化する。CRPCの発生機序を解明することは、新たに効果的な前立腺癌治療法を開発するうえで重要である。マイクロRNAはノンコーディングRNAの一種であり、20-24塩基の小分子RNAである。パッセンジャー鎖とガイド鎖の2本鎖で構成されており、転写後制御を介して標的遺伝子の発現を制御すると考えられている。これまで、2本鎖RNAのうち、ガイド鎖のみが翻訳抑制やメッセンジャーRNAの切断に関与すると考えられてきた。去勢抵抗性前立腺癌におけるマイクロRNA発現プロファイルを解析した結果、miR-455のパッセンジャー鎖とガイド鎖(miR-455-5pおよびmiR-455-3p)の両方が前立腺癌細胞において癌抑制型マイクロRNAとして作用することが示された。The Cancer Genome Atlasのデータを用いて、miR-455-5pおよびmiR-455-3pの標的遺伝子として、PIR(pirin)に着目した。PIRの発現は、miR-455-5pによって直接制御され、ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)手術標本およびCRPC剖検標本で発現が上昇していることが示された。また、siRNAまたは阻害薬を用いてPIRの発現を低下させた結果、癌細胞の遊走および浸潤を抑制した。これらの結果から、PIRがHSPC及びCRPCの有望な診断マーカーであることが示唆された。パッセンジャー鎖を含む癌抑制型マイクロRNAの探索は、CRPCに対する新たな診断マーカー及び治療戦略の開発に寄与しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロRNAは、エキソソームと呼ばれる小胞に包まれて、血液などの体液中を循環すると考えられている。ホルモン遮断療法に対して、治療抵抗性を獲得した去勢抵抗性前立腺癌患者の血清から、すでにエキソソームを抽出している。このエキソソームを用いて、去勢抵抗性前立腺癌・マイクロRNA発現プロファイルをすでに作成中である。去勢抵抗性前立腺癌組織を用いた、去勢抵抗性前立腺癌・マイクロRNA発現プロファイルに基づき、癌組織で発現が上昇している新規癌促進型マイクロRNAを見出している。去勢抵抗性前立腺癌組織のマイクロRNA発現プロファイルと去勢抵抗性前立腺癌の血清から抽出したエキソソームのマイクロRNA発現プロファイルに基づき、両方で発現が上昇している「癌促進型マイクロRNA」候補を探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
去勢抵抗性前立腺癌患者の血清から抽出したエキソソームと、癌組織から作成したマイクロRNA発現プロファイルを用いて、癌組織で発現が上昇している新規癌促進型マイクロRNA候補を抽出する。血清中に存在するエキソソームを用いたマイクロRNA発現プロファイルに基づき、ゲノム科学的手法を用いて、癌促進型マイクロRNAが制御する去勢抵抗性前立腺癌特異的な分子経路を探索する。
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Causes of Carryover |
<理由> 他の癌腫のマイクロRNA解析と消耗品・核酸試薬が共有できたため、研究費の節約が可能であった。 <使用計画> 本年と同様に、マイクロRNA解析と消耗品・核酸試薬を購入する。
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